「自分で産んだかどうかで、愛情に差が生まれるわけではありません」
日本とアメリカの両国で治療を経験したいとうさんに、それぞれの違いについて聞いてみると、
「日本では仕事と治療の両立が難しく、スケジュール管理も大変です。SNS上でも高齢妊活の人に対して〈年取ったお母さんは嫌だ〉など心ない声が飛び交っています。日本にいたら、そういう声に翻弄されて『子どもはもういいかな』と思っていた可能性は高いです」
一方、アメリカでは52歳で産婦人科に通っていた際、自分より年上で妊娠している人もいた。多様な考え方が受け入れられ、さまざまなサポートの選択肢があることも、日本との違いとして感じたそうだ。
ただ、代理母出産を選んだことで、日米の制度の違いにも直面した。
いとうさんによると、自身が出産した長女は実子として日本の戸籍に入り、日米の二重国籍を取得。一方、代理母が出産した次女は、特別養子縁組の手続きを経て1歳の時に戸籍に入ることができたものの、日本国籍は取得できていないという。
「アメリカでは州によって代理出産の制度が異なりますが、日本では、原則として実際に出産した女性が法律上の母親とされます。そのため、次女を私の実子として、そのまま戸籍に入れることはできなかったんです。その後、特別養子縁組によって娘として戸籍に入れることはできましたが、戸籍と国籍は別なので、日本国籍は取得できていません」
卵子・精子提供や養子縁組、代理母出産など、子どもを持つための選択肢が日本では限られていることに課題を感じているといういとうさん。では、自身が出産した長女と代理母が出産した次女への愛情に違いはあるのだろうか。
「私の場合、2人への愛情はまったく同じです。自分で産んだかどうか、痛みを伴ったかどうかで、愛情に差が生まれるわけではありません。愛情は一緒にすごすなかで育まれていくものだと思います。だから、子どもを望む気持ちがあれば、どのような形で子どもを迎えても、100%の愛情を注いで育てていけると思います」
最後に、もし子どもを持たない人生を歩んでいたら、いとうさんはどのように生きていたと思うか、聞いてみた。
「子どもがいなかったとしても、自分で幸せをつかみにいったと思います。子育てが一番の願いなら、出産できなかった場合、養子を迎えたかもしれない。途中で『子育てを経験しなくてもいい』と思えたなら、パートナーといろいろな場所へ旅行したり、2人のために時間やお金を遣ったりしていたと思います。
どんな状況になっても、自分の希望をかなえる。周りが何を言おうと、自分がやりたいことをやる。何を言われても、自分が幸せならそれでいいんです」
30代までは子どもを望まず、40歳から10年以上にわたって妊活に取り組んだいとうさん。3度の流産やさまざまな選択を経て、2人の子どもを育てる現在にたどり着いた。
その言葉から伝わってくるのは、子どもを持つことだけが幸せなのではなく、自分が何を望み、どんな人生を歩みたいのかを考え続けることの大切さだった。
取材・文/木下未希













