ICCが抱える問題

ルビオ米国務長官はICCを「ならず者の裁判所」と呼び、米国の主権を脅かす存在だと非難。10月9日には、裁判所そのものを制裁対象に指定し、米国の金融サービスや技術へのアクセスを制限する異例の措置に踏み切った。

制裁によって、ICCの運営は根底から揺らぎかねない。米国との取引に依存する企業がサービス提供をやめれば、捜査や裁判に必要な業務にも影響が及ぶ。米政府は一部の取引を認める猶予措置や例外などを設けたが、裁判所の活動に深刻な影響が出るとの懸念は根強い。

ICCはこれまでに有罪判決を出してきた一方、その活動には課題もある。設立から20年以上が過ぎても、逮捕状が出されながら身柄の拘束に至っていない容疑者はいる。独自の警察組織を持たず、容疑者の逮捕は加盟国の協力頼みだ。プーチン氏にもネタニヤフ氏にも逮捕状を出したが、身柄の拘束には至っていない。

ICCは2023年3月、ウクライナの子どもたちをロシアに違法に移送した戦争犯罪の疑いで、プーチン大統領に逮捕状を出した。
ICCは2023年3月、ウクライナの子どもたちをロシアに違法に移送した戦争犯罪の疑いで、プーチン大統領に逮捕状を出した。

米国はそもそもICCに加盟していない。自国民や同盟国の指導者が裁かれることへの反発は、トランプ政権に限った話でもない。だが、裁判所の実効性に問題があることと、制裁で活動を妨害することは別問題だ。気に入らない司法判断を下す裁判所の資金や技術を断ってしまえというのでは、法の支配も何もあったものではない。

米国との関係を維持しながら、どこまでICCを支えられるか

ICCは制裁を司法の独立性への攻撃と非難し、加盟国に支援を呼び掛けた。国際司法機関の存続そのものが問われる事態となっている。

そんな中、日本政府の対応は慎重だった。

8月に赤根氏が制裁対象となった際、外務省は19日、「今回の措置は大変残念です」とする報道官談話を発表した。高市首相も同日、記者団に「大変残念に思っております」と述べた。

高市首相は「弱腰には当たらない」と反論するが…(写真/高市氏X)
高市首相は「弱腰には当たらない」と反論するが…(写真/高市氏X)

当初、「残念」という言葉にとどめた政府の対応には、国内からも批判が出た。超党派の議員連盟は、制裁を非難する声明を採択し、日本政府の反応を「諸国と比べて段違いに弱い」と批判した。高市氏は「弱腰には当たらない」と反論。赤根氏を守り、ICCを支えていくとも強調した。

たしかに、中国や北朝鮮への対応で日米同盟が欠かせない以上、米国との摩擦を避けたいという判断には現実的な理由がある。だが、トランプ氏との関係構築に腐心しても、日本人所長への制裁は撤回されず、裁判所全体へと対象が拡大した。日本が米国との関係を維持しながら、どこまでICCを支えられるかが問われている。