生成AI導入で「アットホーム」がやっていること
銀行振込に使うファイルの名前を、まとめて直す。
不動産情報サイト「アットホーム」で知られるアットホームの生成AI活用を取材していて、私がいちばん気になったのは、こんな小さな改善だった。
同社では、ばらばらのファイル名をまとめて変更する仕組みをつくったという。最初は「そこ?」と思った。でも、こういう仕事こそ会社には山ほどある。
営業には、経理が毎月どんな面倒な作業をしているのか分からない。経理には、営業が同じ文章を何度もコピペしていることが見えない。総務が手で直すファイル名など、ほかの部署は存在すら知らない。
どのAIを選ぶか。どんなプロンプトを書くか。その前に、隣の部署で誰が何に困っているのかを、私たちはどれだけ知っているだろう。
便利な使い方で自分の仕事を早く終える。それだけでも価値はある。でも、その人だけの時短で終われば、会社全体ではたいした変化にならない。
その工夫を別の社員が知る。すると「それ、こっちの仕事にも使えるんじゃない?」となる。そこまで進んで、ようやく個人技が会社の力になる。アットホームがやろうとしているのは、まさにそこだった。
自分の面倒な仕事を楽にしたかっただけ
取材した小出敏之さんは、AI・イノベーショングループのグループ長を務める。ずっとIT畑を歩いてきた人ではない。営業の現場にいて、営業所長も経験した。
AIへの入口も、かなり実務的だった。
営業担当者の訪問数や商談数を集め、受注につながっているか確かめる。そのためにExcelの関数を覚えていた。ChatGPTに関数づくりを手伝わせると、集計の時間が減った。
なんだ、これ便利じゃん、という話である。
この順番が大事だと思う。最初から「AIで会社を変革するぞ」と始めたわけではない。自分の面倒な仕事を楽にしたかった。だから、AIを知らない社員がどこで止まるかも分かる。
アットホームは2026年1月にAIアンバサダープロジェクトを始め、3月から全社施策を本格化させた。アンバサダーというと、なんだかAIに詳しい先生を各部署に置くように聞こえる。
でも、小出さんの狙いは少し違う。
「私が使ってくださいと言っても、やる人とやらない人に分かれます。それよりも普段一緒に働く人から、AIを使ってこうだったよという話が出れば、興味を持ったり、使う機会が増えたりする。そこを狙いました」













