「人間の仕事は奪われるのか」とかいうでっかい話の前に…
最近、企業の広報担当者から「生成AIって、実際にはどう使えばいいんですか」と聞かれることが増えた。
これは別に生成AIの未来について聞かれているわけじゃない。「AIによって社会がどう変わるのか」とか、「人間の仕事は奪われるのか」とか、そういう立派な話ではなく、もっとゲンジツ的な話だ。
ChatGPTを開いた。で、何を入力すればいいのか。会社から「AIを活用しろ」と言われた。でも、明日の仕事をどう変えればいいのか。みんな、そこで止まっている。
実際、そういう内容の講演を、いくつかの企業でやってきた。相手は名も知られていない小さな会社ばかりではない。東証プライムに上場してるような大企業でも、生成AIを本当に仕事で使えている人は、まだ驚くほど少ない。
もちろん、ChatGPTやGeminiの名前くらいは知っている。「会社でも導入を検討しています」とも言う。しかし、日常的に使っているかと聞くと、途端に話があやしくなる。
メールの文章を整えたことがある。会議の議事録を要約させたことがある。ニュース記事を短くまとめさせたことがある。だいたい、そのあたりで止まっている感じ。50代なんて、覚えずに逃げ切ろうとしている人だって多い。
「私は競馬の予想をさせています」
一方で、講演の後に近寄ってきて、「私は競馬の予想をさせています」と小声で教えてくれる人がいる。まったく仕事に使ってないじゃないか、と思うだろう。でも、むしろ、こういう人のほうが期待できると思っている。
競馬の予想をさせようと思えば、過去の成績をどう与えるか、馬場状態をどう説明するか、騎手や距離との相性をどこまで考慮させるか、いろいろ試すことになる。
最初の回答が外れれば、質問の仕方も変える。「その予想の弱点を挙げろ」と言ってみたり、「人気を無視して穴馬だけ探せ」と命じたりする。
当たるかどうかは知らない。そこは生成AI以前に、競馬というものが難しい。ただ、その人はすでに、頼み方によって答えが変わることを知っている。AIの言うことをそのまま信用してはいけないことも、たぶん身をもって学んでいる。













