AⅠ時代のパーソナルブランディングの極意
中世の頃から、書類の偽造防止のために、紙に「透かし」を入れるという手法があった。
現代でも上質な紙を光にかざすとトレードマークが浮き上がることがある。フォトグラファー、イラストレーター、デザイナー、映像制作者なども、デジタル透かしを入れて盗用を防ぐ。AI時代には通用しにくくなっている手法だ。
あなたが巧みに仕上げたスライド資料や予算計算シートを、誰かが雛型として活用するかもしれない。あなたが作ったレポートのデータが、誰かのプレゼンで引用されるかもしれない。そんなとき、役に立っているファイルが、あなたという〈変わり者〉のブランドの商品であることを、ちゃんと気づかれるようにしたいのだ。
作ったものには名前、連絡先、そして協力者の名前も付記しておこう。資料やプロジェクトに貢献したら、果たした役割を明記してもらおう。
こういうのはあざといとは言わない。〈変わり者〉のパーソナルブランディングだと思ってほしい。映画好きなら、面白かった作品のクレジットは確認したくなるだろう。同じ監督の映画は全部見たいと思うかもしれない。
あるいは、近所の住宅で見事なリノベーション工事が進んでいるとき、敷地の片隅に建築会社の看板が立っていれば、同じようなリノベを考えている人の役に立つ。看板は誇示ではなく情報だ。優れた仕事なら、求める人もいっぱいいる。もったいぶらずに知らせてあげるほうが親切だ。
ただしこれは、シェアすべき作品や仕事が世に出ていれば、というのが前提だ。比喩的な「透かし」を入れるべき作品がないなら、自分が誰で、何ができるのか、4、5行くらいで開示する文章を作っておこう。テキストファイルやメモアプリに入れておいて、チャンスがあるたびに、すかさずその文面を使い回してみる。
先に準備しておくという点が重要だ。新たな場面でいちいち手間どらないので、心理的摩擦が減り、自己卑下のような悪い習慣を断ち切りやすくなる。ふだんは一歩下がってしまうタイプなら、前に出ることへの心理的負担や感情的ハードルを減らす簡単な手法になる。
おそれず〈変わり者〉として、正直に生きることは、自分自身を大事にする行為だ。
そして爪痕を示す行為にもなる。もちろん、自分らしくいるだけで、あとは人任せというわけにはいかない。自分のために立ち上がらなければならない。自分を自分で守って、機会が近づいてきたらつかまなければ。
文/ジェニー・ウッド 訳/上原裕美子 写真/shutterstock













