「金持ちになりたい」
ほどなくして人づてに恵の複数の元社員に会えることになった。私は愛知県内を訪ねて回った。そこで聞いた話はいずれも衝撃的な内容だった。
恵は中出了輔社長と2人の弟、母親の4人で設立。元社員たちによると、「恵」という社名は母親の名前の一文字から取ったという。
初期の頃に幹部社員だったAさんによると、中出一家は最初に高齢者介護の事業を始めたが、うまくいかず、障害福祉に転換したのだという。なぜ障害福祉を選んだのか。Aさんは中出社長からこう聞いた。
「あるとき、障害児向けの放課後等デイサービスのことがテレビで取り上げられていて、それ見て『これ、めっちゃ儲かるじゃん』と思ったんだよね」
実際、恵はグループホームだけでなく、放課後デイも複数運営していた。Aさんによると、スタッフの子どもで障害がある児童を、全く利用実態はないのに利用者ということにして、報酬を架空請求していた。Aさんはこう証言した。
「利用者やスタッフと同じ名前の印鑑を会社が買って、実績記録などに勝手に印鑑を押していた。だから、利用者もスタッフも見たことのない人の名前が書類に載っていて、『え、これ誰?』と思うことがあった」
中出社長や取締役が不正を指示するのを聞いたこともあったという。
中出3兄弟ら経営陣は「障害がある人たちが親亡き後も暮らせる住まいを作る」「困った人たちのためにグループホームを増やす」と話していた。「でも、それはあくまで表向きに言ってただけです」とAさん。Aさんや複数の社員は経営陣が次のように話していたのを聞いたという。
「株式を上場して儲けたい」
「どんどん事業拡大していくんだ」
「利益は山分けだ」
「やっぱ金持ちになりたいじゃん?」
Aさんはこう振り返る。「どんどんグループホームを作っていくから、知識や経験のないスタッフを雇って、管理者とかにしてしまう。現場の支援は雑になっていって、虐待とかが起き、混乱するという悪循環になっていった」
ある意味ではスタッフも被害者だった。関東のふわふわで働いていた女性元社員は入職時、「夜勤はまず男性社員が一緒に付いて手本を見せる」と聞いていた。ところが実際は、マニュアルを直前に渡され、「これ見て、夜勤に入って」と指示された。付き添いはなし。「いきなりなんて無理です」と言うと、「やってもらわないと困る」。
東海地方のふわふわで働いた女性は当初、「車いすとか身体障害の人の支援です」と説明を受けた。だが実際には、重い知的障害と自閉症で激しい行動障害のある男性入居者たちの支援を任され、入職2日目に入居者に突き飛ばされ、腕を骨折。そのまま退職した。「だまされて、ひどい目に遭いました」と憤った。
「給与とか待遇が採用時の話と違った」「残業代がちゃんと支払われなかった」。元社員たちは口々にそう訴えた。













