「1億円を何のパラメーターに振り分けるのか」問題
元フジテレビアナウンサーで宅建士の資格を持ち、マンション愛好家としても知られる西岡孝洋氏は「率直に言って、人が一生懸命働いて、買うと決断したマイホームに外からケチをつけるのはどうかと思います」としたうえで、「このご夫婦は極めて合理的な選択をした」と指摘する。
「都心へのアクセスが抜群な人気の住宅街で、新築3LDKが約1億円。放送によれば、毎月25万円前後の支払いで抑えているわけです。もし予算を5000万円に下げようとしたら、残念ですが、今の東京圏では都心への通勤に時間がかかるエリアでしか買えません。
ご夫婦の勤務地が新宿駅や東京駅にある場合、毎日の通勤時間や子育ての利便性を捨ててまで遠くに引っ越すのは難しいでしょう。彼らは『広さ』や豪奢な建物ではなく、『都心近くで暮らす時間と人生』を1億円で買ったのです。極めて真っ当な選択だと思います」(西岡氏)
マンション価格が高騰する中で、「1億円というお金」を何のパラメーターに振り分けるのかが大切になっている。通勤利便性に振り分ける人もいれば、広さや建物に振り分ける人もいるだろう。
一方で西岡氏は、マンションを販売するデベロッパー側の姿勢の変化を指摘する。
「今回のマンションの話ではありませんが、昔であればデベロッパーは『1億円の値付けをする部屋なのだから、それ相応の高級な内装にしたり、豪華な共用部を作ったりしなければ売れない』という意識がありました。しかし今は建築費や用地取得費が上がりに上がってしまい、総額を1億円前後に抑えようとすると、そういったものをコストカットせざるを得ません。
それに、デベロッパー自身にも『1億円程度の部屋なら、別に特別仕様にしなくてもこのくらいの仕様で売れるでしょ』という雰囲気が出来上がってしまっているような気がします。売り手側の意識変化という点でも、今の億ションの切なさを感じます。
昔の感覚で『1億円出せば大理石張りの豪華なエントランスがあって、広々としたリビングがある100平米超の部屋で、コンシェルジュがいて……』という『豪華絢爛な億ション』をイメージしていると、今の現実には絶対に追いつかない。
世間一般が想像するような本当の『昔ながらの億ション』を買おうと思ったら、今の23区では2億円か3億円を出さないと買えません。1億円という価格は『特別な高級住宅』ではなく、東京23区で普通のファミリーが家を買うための『スタートラインの金額』になってしまったと感じます」
「億ションなのにしょぼい」という批判は、購入者個人の目利きやセンスの問題ではなく、コスト高騰によって歪んでしまった東京の住宅市場の構造そのものが映し出された結果と言える。














