「ワンちゃんはみんなに優しいからようモテた」
「同期のワンちゃん(王貞治)とは、互いに騒がれて入ってきた者同士ということで新人のときから飯も食いに行く仲でした」
王貞治の話になると、板東英二の少しこわばっていた顔がほころんだ。
1958年夏の甲子園で徳島商業のエースとして83奪三振の大会記録を樹立し、“戦後の怪物”と呼ばれた板東。一方、王も高校時代から甲子園で脚光を浴びたスターだった。
板東が中日に入団し、王が巨人に入ったのは同じ年。ともに高校野球で注目を浴び、そのままプロの世界へ飛び込んだ同期だった。だからこそ、球団の垣根を越えて親しくなったという。
「名古屋に来れば行きつけの寿司屋に連れていったり、僕が東京に行けばワンちゃんが中華料理に連れて行ってくれたりしましたね」
世界のホームラン王となる王も、板東にとってはあくまで「ワンちゃん」だった。
「彼は2年のときの選抜優勝投手で3年夏は甲子園に出ていない。僕は夏の準優勝ピッチャーだから入団時は僕のほうが格は上でした」
板東らしい軽口を交えながら、嬉しそうに振り返る。
王との付き合いはグラウンドの外にも及んだ。
「彼はビールが大好きでね〜。お店に行ってもみんなに優しいからようモテた」
さらに板東は、王の女性への接し方についても冗談交じりに語った。
「僕なんか美人しか相手にしないけど、ワンちゃんは誰隔てなく接し、むしろちょっとあれっていう子に優しくしていたね。あれはなんでやろうね」













