対象は約3000人、それでも審議されず…38年ぶりの救済法案が廃案に
こうした戦災障害者の援護法案は1970年代から88年にかけて野党が提出し、廃案になることが繰り返されてきた。
「野党からの提出では、議会全体の賛成は得られないと分かっていたので、超党派でなんとかまとまった形にしたいと考えました。だから要求のレベルも下げてなんとか法案が成立する方法を探りました」
当初、全国空襲連は戦災孤児(遺族)への補償も求めていたが、要求を大きく下げ、一時金の支給対象となるのは、法施行時に存命で、空襲等によって一定の身体障害や外貌の傷痕、精神障害が残る「被害当事者」に限られる。
対象者は約3000人と見込まれる。全国空襲連とともに法制定を求めてきた「沖縄・民間戦争被害者の会」の瑞慶山茂弁護士は、そのうち500~1000人は沖縄地上戦に巻き込まれ、今もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人ではないかと指摘する。
厚生労働省によると、戦没者は約310万人で、このうち軍人・軍属が約230万人、東京大空襲の犠牲者らを含む民間人は約80万人とされている。元軍人・軍属やその遺族には、恩給や年金でこれまで60兆円超が支払われてきたが、今回の法案で対象者全員に支給が行なわれても、一時金の支給総額は約15億円程度にしかならないと試算されている。
それでも、38年ぶりに国会に提出された法案は参議院厚生労働委員会への付託もされず、7月25日の国会閉会で廃案となった。
自民党の平沢勝栄衆議院議員が会長を務める空襲議連がまとめた法案が、継続審議にもならなかった。自民党内で法案が了承されず、議連の野党議員だけが提出者になったためだ。与党の自民と維新が法制定に取り組まなかったことで、1970~80年代に廃案が続いたのと同じ状況になった形だ。
8月4日、参議院議員会館では、空襲や沖縄戦の被害者や支援者、韓国・朝鮮人BC級戦犯の名誉回復を求める団体、シベリア抑留体験者らが集まり、こうした人々の苦しみは今も続いており、「国策として遂行された戦争の後始末を、80年経っても国家が引き受け、償うのは当然のことです」として法制定を改めて求めた。
河合さんは、実は保守色が強い高市早苗首相のもとでも自民党は法案成立に動くのではないかと楽観的に考えていたと打ち明ける。
「高市さんには最初、すごく期待したんです。でも実際には動いていただけなかった」
そう落胆する河合さん。首相と自民党に何があったのか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班












