タワマンへの「半投半住」で資産形成 

「住宅ローンの返済は単なる支出ではなく、自分の資産を積み上げていくプロセスだと考えている」。外資系IT企業で働く小寺光国(仮名、39歳)は2023年に竣工した東京都港区のタワマン、「プラウドタワー芝浦」を購入した。

慶應義塾大学を卒業後、賃貸住まいを続けてきた小寺だが、マンション価格が上昇していることを受け、購入を決断。

「家賃のように消えていくお金ではなく、返済を重ねるごとに資産の持分が増えていくため、ある意味で資産形成の側面もあると考えている」と説明する。

将来の売却を念頭に、自宅を投資商品として捉える半分投資、半分居住の「半投半住」というスタイルは近年、都市部を中心に定着しつつあり、マンション価格の上昇要因となっている。

ライフルホームズが25年に実施した調査では、過去4年で東京圏の主要エリアでマンションを売却した経験を持つ人のうち、45.4%が購入時点で「いずれ売却しようと思っていた」と回答。「ずっと住もうと思っていた」の36%を大幅に上回った。

月々の家計が赤字となり、ボーナスをあてにしたような不安定な計画であっても、担保となるマンションの価値が上昇を続ける限り、銀行としては問題ない。

住宅購入者にとっても、売却時に無事に「含み益」を取り出すことができれば、投資としては正解となる。

しかし日銀はマイナス金利政策を解除

かくして、将来の売却益を見込んで住宅を購入したい購入者、持ち家を促進したい国、低金利下で融資残高を増やしたい金融機関という3者の思惑が一致した形で、住宅ローンを活用してレバレッジをかけた半投半住のマンション購入は一つのブームとなり、都市部のマンション価格を押し上げることとなった。

だが日銀は2024年3月、植田和男総裁の下、マイナス金利政策を解除。その後も段階的に金利を引き上げている。

本稿を執筆している26年7月の段階で政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標は1%だが、市場のコンセンサスは利上げ継続を織り込んでいる。

住宅ローンの金利競争にしのぎを削っていた銀行も相次ぎ金利を引き上げており、26年に入ってからは融資の可否を判断する際に使う審査金利を引き上げて融資を絞るなど、十数年ぶりの「金利ある世界」へと戻りつつある。

新築マンションには転売規制が導入され、モデルルームの予約に人が殺到することも、人気の部屋の抽選に3桁の倍率がつくような光景も激減した。