コロワイドとの協業による成功

大戸屋の人気がすごい。都心にある店舗では平日ランチタイムから満席で、並ぶことも珍しくないという。同社によると、もともとのメインの客層である30~50代の女性に加えて、同年代の男性の利用も増えており、特にオフィス街の店舗では昼夜問わずビジネスパーソンで賑わっている。

大戸屋南越谷店 写真/大戸屋提供
大戸屋南越谷店 写真/大戸屋提供

長年利用しているユーザーに話を聞くと、近年では女子大学生のグループや子連れファミリーの「ファミレス代わり」利用、仕事終わりの「ちょい飲み」利用など、これまでにあまり見られなかった客層が増えているという声も聞こえてきた。

実際に数字で見ると、既存店の売上高が2021年11月から2026年6月まで56カ月連続で前年同月超えを続けており、2026年6月末現在で、店舗を国内約325店舗、海外約145店舗にまで拡大(フードコート業態など含む全業態)。大戸屋ホールディングスは、2026年3月期に370億円(前年同期比18%増)、営業利益が21億円(前年同期比29%増)で連結売上高と連結営業利益はいずれも過去最高を記録していて絶好調だ。

いま、これほどまでに大戸屋が人気を集める理由、それを筆者は、「ちょうどよさ」にあると考える。

どうして多くの人が、大戸屋を「ちょうどよく」感じているのだろうか。

まず前提として人気の背景には、ここ数年の改革が実を結び、定食店としての提供価値が向上していることがある。

大戸屋は、もともと1958年に東京・池袋に開店した。全品50円均一の「50円食堂」の愛称で親しまれた「大戸屋食堂」に始まり、その後、1983年に多店舗展開に向けて株式会社大戸屋が設立され、国内外に出店を広げていった。

ヘルシーな定食店として人気を集めたが、2010年代後半から業績を悪化させていき、2020年3月期には赤字を経験、不採算店舗の閉鎖を余儀なくされた。

この苦境の中、2020年9月に外食産業を中心に多様なブランドを展開するコロワイドによるTOBが成立。その後、同社の連結子会社となったことでさまざまな改革が推し進められていく。

株式会社大戸屋、商品マーケティング本部の河瀬氏によると、

コロワイドグループとの協働による調達コストの削減

・定食メニューの絞り込みと、適正価格の見直し

などの改革の数々が着実に実を結び、大戸屋の提供価値を向上させていったという。

さらに継続的なフェア開催によって、既存客を飽きさせず、また、新規客を呼びこむ取り組みにも注力。2025年10~11月には、アニメ『ハイキュー!!』と「大戸屋×ハイキュー!! 勝利に導く、勝負飯! コラボキャンペーン」を展開して大きな反響を呼び、このIPコラボが若年層の新規来店に繋がったと説明する。

大戸屋の提供価値は確かに向上しているように感じるが、それでも同じ和食定食業態の店舗や、さまざまなジャンルの外食店など、外食業界には強力なライバルたちがひしめいている。

その中で、なぜ大戸屋が多くの顧客からの支持を集めているのか。

語弊を恐れずに言うと、大戸屋は他のライバル店とまったく異なる、オンリーワンの特別な尖った特徴があるわけではないだろう。

ヘルシーな定食店、和食メインのファミリーレストラン、牛丼チェーンなど、よりリーズナブルな選択肢、ライバルとなる外食店は少なくない。

そして大戸屋は、特別にオシャレな店というわけでも、派手な店というわけでもない。けれども、健康志向という点ではライバルたちに差をつけているのではないだろうか。