「私の使命は、潰れない会社を次の世代へ渡すことです」

――66歳になられたいま、ご自身の経営者人生を振り返って、最も大切にしてきたものは何でしょうか。

星野 やはり「潰れない会社」をつくることですね。星野リゾートはファミリービジネスです。私の代で急成長しましたが、本当に重要なのは、その先も会社が存続することです。

私は「潰れない会社」という言葉を、「持続可能な競争力」という言葉で表現しています。その競争力を次の世代へ受け渡すことが、4代目である私の使命だと思っています。

――いまも第一線で活躍されていますが、ご自身はいつまで経営者でおられるつもりですか。

星野 もうだいぶ離れてきているんですよ。実際、この10年ほどで私の仕事はかなり減っています。意図的に減らしてきました。以前なら私が判断していたことも、いまはどんどん次の世代に任せようと。私が関わらなくても会社が回る領域を、少しずつ広げてきました。

――次世代への継承については、一定の手ごたえがあると。

星野 今、僕が急にいなくなっても、会社は5年10年は全然大丈夫だと思いますよ。ただ、今は非常に競争も激しいので、経営は常に、市場や競合を見て、新しいことにチャレンジしていかないといけないし、その時代ごとにやらなきゃいけないことは出てくると思います。

――多くの経営者は、仕事を手放すことに難しさを感じます。

星野 私は逆ですね。ある日突然、社長を辞めるよりも、少しずつ責任を渡していくほうが組織にはいい。自然にフェードアウトしていく。それが一番健全な承継だと思っています。

星野佳路 1960 年、長野県軽井沢町生まれ。1991 年、星野温泉(現在の星野リゾート)社長(現在の代表)に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換させ、今に至る ©テレビ東京
星野佳路 1960 年、長野県軽井沢町生まれ。1991 年、星野温泉(現在の星野リゾート)社長(現在の代表)に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換させ、今に至る ©テレビ東京
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「会社は、自分の子どもではありません」

――オーナー経営者の中には、「会社は自分の子どもだ」と表現して、なかなか手放さない人もいます。

星野 私はそう思ったことはないですね。基本的には、あんまり仕事が好きじゃないんだと思うんです。

僕はこれまで集客を担当してきましたが、集客し続けることの大変さは一番に理解しているつもりですし、お金の面も大変でした。ですから、それをずっとやりたいなんて全く思わないですね。

会社は自分のものでも、子どもでもない。経営者として評価されるのは、「自分がいなくても競争力が残る組織をつくれたかどうか」です。逆に、私がいなければ会社が成り立たないのであれば、それは経営者として失敗だと思います。

――「カリスマ経営者」であり続けることには、興味がない。

星野 ないですね。私が集客を担当し続ける会社では、次の世代は育ちません。だから私は、個人の能力ではなく、会社の仕組みとして集客できる体制をつくってきました。
ブランドも、予約システムも、そのために整備してきたんです。