ファミリーレストラン化するマクドナルド

サイゼリヤは9月以降の値上げを示唆した。価格改定によって採算性が改善すれば、現在絞り込んでいるメニューの一部を復活させる余地も生まれるかもしれない。品ぞろえが充実すれば、競争力はさらに高まる。

サイゼリヤは2026年6月に肉料理の定番メニューである「若鶏のディアボラ風」と「柔らかチキンのチーズ焼き」を通常ラインナップから外した。鶏肉が供給不足になっていることによる措置だという。

人気No.1メニューの「ミラノ風ドリア」は1983年の誕生時は380円、現在273円(税込 300円) (撮影/集英社オンライン編集部)
人気No.1メニューの「ミラノ風ドリア」は1983年の誕生時は380円、現在273円(税込 300円) (撮影/集英社オンライン編集部)

サイゼリヤはメニュー数を絞り込み、効率化を進めることで低価格化を実現してきた。豊富な品ぞろえを維持したまま、低価格で提供し続ければ、オペレーション負荷が高まって「安かろう悪かろう」という形で、ブランドイメージを損ないかねない。人気メニューに集中することでクオリティも守ってきたのだ。

しかし、「若鶏のディアボラ風」のような定番肉料理がグランドメニューから姿を消す影響は大きいはずだ。サイゼリヤは早期販売再開に向け、原材料の安定調達に努めていると発表している。一部商品の値上げによって原材料費に充てられる金額が大きくなれば、食材の調達環境は改善する可能性もある。

定番商品の復活によってメニューの選択肢が広がれば、価格だけでなく、品ぞろえを含めたコストパフォーマンスの高さも意識されるようになる。目当ての商品がなくなったことで来店頻度を落とした顧客を、呼び戻す効果にも期待できる。

サイゼリヤが重視するアフォーダブルプライスという戦略は、かつてマクドナルドを象徴するものだった。しかし、現在のマクドナルドは「バリューフォーマネー」へと傾いているように見える。

バリューフォーマネーとは、支払った費用(マネー)に対して、どれだけ価値の高い成果(バリュー)を得られたかを測る費用対効果のことだ。

つまり、顧客が感じる価値をベースとして、価格を設定するものだ。原価や競合の価格ではなく、顧客にとって支払う価値があると感じてもらうことを重視する。

足元で強化しているのが店舗体験の向上である。モバイルオーダーや事前決済などデジタルの活用で待ち時間を減らし、クルーが席まで食事を運んでくれるようにもなった。朝・昼・夜向けのメニューは充実しており、スイーツにも力を入れている。マクドナルドの店舗体験はファミリーレストラン化しているのだ。

マクドナルドは「バリューフォーマネースコア」(価格以上の価値があると顧客が感じる指標)を重視しており、2025年のスコアは2024年を上回っている。

マクドナルドは戦略的に従来のポジションから抜け、高価格帯へとシフトしようとしているように見える。裏を返せば、マクドナルドがかつて取り込んでいた、割安感を重視する顧客層に空白が生じることになる。サイゼリヤはその顧客を取り込める立場にあるわけだ。