「娘に何が起きたのか」遺族が国と県に問う捜査の責任
ただ、A子さんの言葉からは捜査の発端となったYさんを責める気持ちは感じられない。Yさんは以前にも別の施設をめぐって虐待を申告したことが複数回あり、「虐待じゃないか」との申告の直前には、「Yさんの世話を一手に引き受けていた担当者が辞めたことで気持ちが不安定になっていた可能性がある」とも話す。
問題はYさんではなく、虐待情報の真偽が調べられることもなくいきなり施設スタッフが逮捕されたことだとA子さんは訴える。
「虐待通報があれば通常、“被害者”とされた人が暮らす自治体が当人や施設など関係者に事情を聴いて本当かどうかを判断する場合が大半です。でも今回は(被害者とされたXさんが暮らす)β市からは何も問い合わせがなく、突然警察が来て逮捕しました。
それで私は逮捕当日にイベントの資料を持って明石警察署へ行き現場の事情を全部説明したのに、るなとBさんの勾留が続いたのです。こうなると障がい者支援に関わる者は誰が守ってくれるんですか」
佐々木弁護士は、「警察、検察が、障がい者支援の現場を少しでも知り、障がい者の特性を踏まえ、適正に捜査し、適正に手続きを踏んでいれば、るなさんは今もきっと生きていたはずです」と話す。
今年6月に国や県を相手に起こした国家賠償請求訴訟を通じ、A子さんと弁護団は、違法な捜査や健康管理義務違反の責任を問うだけでなく、障害者支援に取り組む人が安心して支援できる環境をつくりたいと話す。
関係機関にA子さんの主張に対する説明を求めたところ、
「個別の案件についてはお答えできない」(兵庫県警)
「ご遺族が国家賠償請求訴訟を提訴した旨の報道は承知しているが、個別事件の捜査の具体的内容にかかわる事柄でもあり、訴状の送達も受けていないためコメント取材をお受けすることはできない」(神戸地検)
「一切お答えできない」(β市)
と、それぞれ回答した。
また平口洋法相は7月9日の参議院法務委員会で受け止めを聞かれ、
「個別事件における捜査の具体的内容にかかわる事柄であることから法務大臣としての所感を述べることは差し控えたい」
とだけ述べた。
A子さんは訴える。
「教えてほしいです。娘に何が起きて、なぜ逮捕され、勾留され、そしてなぜ命を落とすことになったのか。なぜ16歳の娘が信じていた優しさや思いやりが十分に届かなかったのかを」
そんな訴えを問う法廷が間もなく始まる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













