「虐待ではないか」申告はなぜ16歳女性の逮捕に発展したのか

るなさんは、母のA子さんが責任者を務める兵庫県内の障がい者支援施設で働き、障がい者支援を自分の生きる道だと考えていたという。

A子さんは、「元気はつらつで思いやりをもって利用者さんに接する子でした。施設のイベントはすべて彼女が考えていました」と話す。

昨年2月15日、るなさんが企画した行事であるバレンタインイベントが開かれた。そこで知的障がいをもつ女性Xさんが、他の参加者を噛もうとする行為があり、るなさんと成人男性スタッフのBさんが「あかんよ」と言いながらXさんのあごに手を添え、制止したことがあった。

この場にいた別の利用者で知的障がいを持つ女性Yさんが、約1カ月半後の去年4月1日、住居があるα市の窓口で福祉関係の手続きをした際、「(るなさんとBさんのXさんへの行為は)虐待なのではないか」と申告をする。

この情報がXさんの居住地のβ市と明石警察署に伝えられ、同年6月17日、同署はるなさんとBさんをXさんへの暴行容疑で逮捕。小野警察署で勾留されたるなさんは容疑を否認し続けたが、「ショックで食べれない」(被疑者ノートの記載)状態になった。7月3日に嘔吐して緊急搬送されるが、即日、留置場に戻されて翌4日に釈放される。

元気だった頃のるなさん(仮名)(写真/遺族提供)
元気だった頃のるなさん(仮名)(写真/遺族提供)
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被疑者ノートには取調官が、「Bは言ったぞ」「なんでBと言ってる事がちがうんやろな」などと言ったと記されている。だがBさんも容疑を認めた事実はない。

A子さんの代理人、佐々木正博弁護士は、「事実と全く異なるウソを言って不安を煽り、錯誤に基づく自白を誘導しようとした」と、違法な捜査があった可能性を指摘。るなさんが倒れたことで当局はようやく釈放したとみている。

食事を受け付けない体になっていた、るなさんの体重は釈放翌日には27.7キロしかなく、逮捕前より約10キロも減っていた。体は快復せずに痩せ続け、12月14日に「低栄養状態」で亡くなった。

釈放後、やせて衰弱したるなさん(仮名) ※「亡くなる前の状態を知ってほしい」との遺族の意向で、顔を隠さず公開します(写真/遺族提供)
釈放後、やせて衰弱したるなさん(仮名) ※「亡くなる前の状態を知ってほしい」との遺族の意向で、顔を隠さず公開します(写真/遺族提供)