「Bは言ったぞ」被疑者ノートに残された自白誘導の疑い
当局はYさんの話だけで立件できると考えたのだろうか。佐々木弁護士は、
「そう思えないからこそ(警察、検察は)自白を取りにきて、必要もない身体拘束をしたということです。しかし、るなさんもBさんも否認を続けたため、当局は虚偽自白へと追い詰めようとしたのでしょう」とみる。
根拠は、るなさんの被疑者ノートの記述と、これと一致する生前の本人の証言だ。
ノートには取調官の言葉として、
「Bは言ったぞ」「なんでBと言ってる事がちがうんやろな」
「(最初の勾留満期の6月)27日にバイバイできると思ってんの」
「お母さんに早いうちにあわせたる」
と書かれている。
さらに、「好(き)なタイプ、すきなひとはおらんのか」との記載があり、逮捕7日目には、
「フラフラする、息ぐるしい」と伝えたのに、何の処置もされなかったとの記録もある。
佐々木弁護士は、ウソによる自白誘導や脅迫、懐柔、セクシャルハラスメントが行なわれ、体調不良の訴えが無視された記録だと指摘する。
やむを得ない場合しか勾留が認められない「少年」に該当するるなさんを、逃亡や罪証隠滅のおそれもないのに拘束し、健康管理をせず、違法な取り調べをしたことが死を招いたとし、「人質司法の弊害が最悪で悲惨な形で16歳の少女を襲ったのです」と怒りをあらわにした。
Bさんも昨年7月7日に釈放され、2人は同日付で不起訴となった。神戸地検は不起訴の理由が「嫌疑なし」と「嫌疑不十分」のどちらかなのかを今も明らかにしていない。
だがA子さんによれば、虐待を言い出したYさんは昨年8月、明石警察署まで出向き、A子さんと警察官の前で「虐待かわからないって言った」と主張。
今年3月には、「ぎゃくたいではないと思った。オーバーに言ってしまってすいませんでした」とA子さんへの手紙に書き、最初の証言を覆した。つまり、嫌疑事実は最初からなかった可能性がある。
るなさんは生前、「警察官の人らから見ても悪いことしてないってちゃんとわかったんやったら、やっぱ謝ってほしい」と言い続けた。
その願いを拒んだ県警と地検の責任を問うため、A子さんは逮捕から1年となった今年6月17日、国と県に約1億921万円の支払いを求める国家賠償請求訴訟を神戸地裁に起こした。
#2に続く
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













