サブスクで考える選ばない消費

私たちが「出会い」を求めている証左は、他にもいろいろあります。サブスクサービスの広がりも、その一つではないでしょうか。サブスクの魅力は、買って所有するのではなく、定額で多様な商品やサービスを試せるところにあります。

たとえば、1万円を払って一つの物を購入する場合、出会いは一回きりです。けれど同じ1万円をサブスクに使えば、複数の異なる商品や体験に触れることができる。出会いの回数は単純に増え、それだけ意外性や楽しみが広がります。

以前、経済番組のディレクターから、サブスクをテーマにした取材の話を聞いたことがあります。その中で特に印象的だったジャンルをいくつか紹介してみたいと思います。

まず分かりやすい例が、文房具のサブスクです。文房具専門店を運営する「カネゲン」では、毎月およそ3000円の定額で、「日常で使えるベーシックだけれど〝おしゃれ〟で〝上質〟な文房具」をテーマに、ペンやホチキス、付箋や封筒などを届けてくれます。「仕事や勉強がはかどる」「いつもの事務仕事が少しだけ華やいだ気分になる」といった声が寄せられており、届くまで中身が分からないぶん、小さなガチャのような楽しさもあるようです。

次に家電のサブスクが挙げられます。「高級家電をひとまず試してみたい」というニーズを捉えたサービスで、たとえば「Rentio」では炊飯器やプロジェクター、美容家電などを一定期間レンタルできます。

2025年7月にレンティオ株式会社が公表した情報によれば、すでに月間15万人以上が同サービスを利用しているそうです*1。定価16万円ほどする炊飯ジャーを、月額4500円ほどで試せるのはかなりお得感があります。

このサービスの特徴は、家電メーカーの協力を得ていることです。メーカーは本来、購入してもらう方が利益につながりますが、レンタル期間を経て、試した上で買うという選択肢を用意することで、お試しのハードルを下げています。

「ルンバ」で知られるロボット掃除機もラインナップに加わっていて、4万円ほどの機種を月額1000円以下で使えます。これを選ばない消費といえるのか、と感じる方もいるかもしれませんが、これもまた「買って持つ」から「借りて使う」へと移行する中で、「自分で選ばなければ」という意識が薄れ、「人が選んだモノで構わない」と考えるようになる変化と同じ流れにあるといえます。ここに自分が買うのだから自分で選ぶ、という意思はありません。

ルンバ 写真/Shutterstock
ルンバ 写真/Shutterstock

ブランド服のサブスクも、ここ数年でぐっと存在感を増してきました。たとえば大丸松坂屋が展開する「アナザーアドレス」は2021年に始まったサービスですが、2025年末時点で会員数が37万人に達しています*2。Traditional WeatherwearやCOACH、MSGM、JILL STUARTなど、海外の有名ブランドもそろっていて、さまざまな服と出会えることが人気の理由の一つになっています。

これも家電のサブスクと同じロジックで、所有という枠組みを超えたところに消費意欲が生まれているのだと思います。このサービスはクリーニングが行き届いていて、新品同様の状態で届くのも特徴です。

気に入った服を何度もレンタルする人もいるそうです。「それならいっそ買ったらいいのでは?」と思うかもしれませんが、所有にこだわらず、手軽にいろいろ試してみたいというニーズの方が勝っているのでしょう。

そして、ホテルのサブスクも注目を集めています。東急は定額宿泊サービスの「ツギツギ」というプランを展開し、全国の提携ホテルに好きなだけ滞在できる仕組みを用意しています。

こうして見ていくと、サブスクは単なる便利さ以上に、予期しないモノや体験との出会いを生む仕組みとしても機能しているのだと思います。