「限定的な規制をする決まりを作るのなら賛成したい」

こうした人が閉山期に山に入って遭難を繰り返し、登山家と観光客の区別なく「山イコール危険」という印象を与える報道が続いた結果、“なんでそんな危ない変なことをやるんですか”という見方が広がり、「登山という文化自体を偏った目で見る一般の人が増えてしまった」と鈴木氏は嘆くのだ。

ただ、そうした危ない観光客の山への進入は食い止める必要がある。

方策をたずねると鈴木氏は、すでに国内で行なわれている限定的な入山規制を例に挙げた。本物の登山家の遭難死が過去に続出し「魔の山」と呼ばれる群馬・新潟県境の谷川岳(1977m)などで取り入れられている制度だ。

谷川岳(写真/PhotoAC)
谷川岳(写真/PhotoAC)

「谷川岳(の危険地区)では条例により、10日前までにふもとの登山指導センターへの登山計画書を提出することが義務付けられています。センターは必ず計画書に目を通し、登山者の力量や計画に疑問があれば指摘もします。

さらに雪崩の可能性があるなど特に危険な地域は、時期を限定して入山禁止措置もとられています。

富士山でも危険性を判断する根拠を持ち、限定的な規制をする決まりを作るのなら賛成したいです。でも今の議論は考えることをやめ、とにかく観光シーズン以外は全部閉めましょうというもの。まさに観光のエゴだと思います」(鈴木氏)

署名活動開始後、鈴木氏のもとには「お前がそれを言うんだったら全責任を負え」という非難の声も届く。

その一方で、アルピニストからは「よく言ってくれた。協力したい」との応援も寄せられている。

静岡県の防災ヘリコプター(写真/県HPより)
静岡県の防災ヘリコプター(写真/県HPより)

冬の富士山に登れなくなれば、日本の登山界の衰退に直結するとの焦燥感があるという。

「厳しい気候条件に加え、ヒマラヤなどの7000、8000m級の高峰を目指す時、薄い酸素に慣れる“高度順応”が事前に求められますが、これが標高4000m程度に身を置くのが一番いいとされています。

標高3776mの富士山の次に日本で高い北岳(山梨県)は3193mしかなく富士山は唯一無二の山なんです」(鈴木氏)

富士山(撮影/集英社オンライン)
富士山(撮影/集英社オンライン)
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地元メディアによると須藤市長は鈴木氏の署名がネットで展開されていることについて今月の定例記者会見で、救助におもむく消防隊員のリスクを強調しながら、

「地元としては迷惑な話。登っちゃ困るという、私たちの⽴場をもう少し理解してもらいたい」と話した。

日本一の山を巡る攻防は登山文化の行く末も絡み、まだまだ続きそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班