「冬の富士登山ができなくなれば、日本人アルピニストは育たなくなる」
署名を呼び掛ける、クライマーで山岳映像制作者の鈴木岳美氏(31)は「海外を目指すアルパインクライマーの訓練の場である冬の富士登山ができなくなれば日本人アルピニストは育たなくなる」と訴える。
同時に、富士山を巡る最近の報道が、登山への偏見を生んでいるという危機感があるとも話す。どういうことか。鈴木氏はまず富士山の特殊性を挙げた。
「問題のある救助要請が増えたのは事実だと思います。1つは富士山が夏の観光で“初心者でも登れる山”というレッテルが貼られたことでしょう。
『夏に登れるからちょっと季節が違っても登れるでしょう』という感覚で閉山期に入ったけど思ったより厳しかったので救助を求めた、というのが目立っていると思います。
“夏は安全です”というプロモーションと観光開発をした結果、『自然に近づいていること』を見せなくしたのも要因でしょう。
実は富士山は、夏と冬に求められる技術レベルの差が大きい山です。冬にヒマラヤ並みに風が吹くこともありますが、一方で夏は整備しすぎてしまった。
標高2300mの五合目は平地より気温が10℃以上低い過酷な環境なのに、そこまで車を使ってノーリスクで行けてしまう。登山道も完全に整備されています」(鈴木氏)
確かに須藤市長は、
「富⼠⼭は安全な時に登っていただきたい。冬⼭に登れなくても、夏でも開⼭中はいつでも登れますから」
と夏の登山を呼びかけている。だが鈴木氏はこの認識に反論する。
「夏は安全ですって言い切るのはものすごく危険なことです。私は夏の富士山でガイドをした経験もありますが、夏でも午後は落雷の危険性が高まります。
登山は、そうした危険も含めた自然と向き合い、自分の体と自然をいかに調和させるかを追求する遊びです。そういう意味で言うと、夏の富士山で今行なわれている行為は登山ではなく観光なんですね。その“観光客”が(山岳技術を擁する)閉山期にはみ出してきている部分が問題だと思います」(鈴木氏)













