財政悪化懸念の高まりで円安が進行すれば物価高に拍車も

消費税の引き下げは円安を招きやすいという別の問題もある。1%への引き下げで4兆円程度の財源が失われる。高市首相は赤字国債には頼らないとし、補助金や政策減税の見直しなどで賄う方針だが、具体的な道筋については明示されていない。

歳入減によって財政悪化への懸念が高まる。拡張財政路線は円安に拍車がかかりやすいのだ。日本銀行は6月15日、16日の金融政策決定会合で政策金利を1%に引き上げる追加利上げを検討中だ。

木原稔官房長官は6月4日の記者会見で、「適切な金融政策運営を行なうことを期待する」と述べ、直接的な言及は避けたものの利上げへの理解を示したと受け止められた。

しかし、6月4日時点でドル円は159円から160円前後で推移しており、利上げ観測がある中でも円安水準にある。

仮に日銀が政策金利を1%にしたとしても、0.25ポイントの引き上げだ。FRBやECBなどと比べると利上げペースは遅く、よほどのサプライズがない限りは円高へと大きく振れる可能性は低いだろう。

高市早苗首相(写真/本人SNSより)
高市早苗首相(写真/本人SNSより)

つまり、物価高の要因の一つとなっている円安は解消されないのだ。

また、食料品限定での引き下げは外食産業にとって打撃が大きい。相対的に外食価格が割高になるからだ。ただでさえ、消費者の節約志向の高まりで飲食店の利用は控えられている。一部の業界が置き去りにされる懸念があるのだ。

そもそも、政府が消費税を8%から1%に引き下げるからといって、2027年4月から一律で販売価格が下がるとは考えにくい。食料品がスーパーの店頭に並ぶまでには、生産者や問屋、配送業者など様々な事業者が関わっているからだ。

2027年4月の統一地方選挙も狙いの一つ?

消費税減税の議論は導入ありきで進められ、「物価高対策」という大義名分で国民の支持を取りつけているような印象がある。

そして、導入のタイミングで行なわれるのが「統一地方選挙」だ。高市政権は依然として高い支持率を維持しているが、国民に対して目覚ましい成果を出しているとは言い難い。ガソリンの暫定税率廃止は迅速に進んだものの、イラン攻撃によって原油が高騰。暫定税率廃止の影響が相殺されてしまった。

国民に伝わりやすい形で、現政権を支持したメリットを示す必要があるわけだ。いっぽうで、「責任ある積極財政」で掲げている財政規律を維持する姿勢が求められてもいるはずだ。

2023年の統一地方選さいたま市議選にて当選し、その後、辞職した永井里菜さん…次回の統一地方選はいかに(撮影/村上庄吾)
2023年の統一地方選さいたま市議選にて当選し、その後、辞職した永井里菜さん…次回の統一地方選はいかに(撮影/村上庄吾)
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取材・文/不破聡