ライブは「座って観る」という異様な緊張感

あの頃、宮本はいつも苛立っていた。歌うというより、がなり立てるといったほうが正確なところで、受け手の気持ちを一顧だにせず、尖った言葉の礫を投げ付けていた。

この頃でしたっけ。インタピューで「俺は師匠が欲しい」と発言。そうしたら、とあるライブ終了後、観客のひとりがステージ前に押し寄せ、楽屋まで届けとばかりに「宮本、前匠が来たぞ!」と大声で叫んだが宮本は現れず。客は痺れを切らし、「もういい、おまえは破門だ!」と去っていったエピソード。

あとやはりこの頃。今は無き池袋リブロで宮本が江戸時代の古地図を立ち読みする現場を目撃。ステージと変わらない面構えで、とても声などかけられなかった。

関話休題。次に行ったライブは93年7月2日、これも今は無き(このフレーズこれで何回目)五反田ゆうぽうと簡易保険ホール。これまで持て余していた宮本の怒りが超キレキレのアッパーソングとして昇華する6枚目のアルバム『奴隷天国』をリリースしたばかり。

セトリは①ファイティングマン②おはよう こんにちは③てって④浮き草

6枚目のアルバム『奴隷天国』(1993年)
6枚目のアルバム『奴隷天国』(1993年)

ここで観客から「宮本!」の声、宮本「何怒ってんだよ」と返す。

⑤無事なる男⑥ふわふわ⑦ゴクロウサン

MC「自己主張しちゃダメなんだよ。みんな。おとなしくおとなしく生きていきましょう。(観客から声)青年の主張ではないので質問は一切受け付けていません」

⑧太陽の手節⑨絶交の歌⑩土手(ドラムのトミー作詞作曲による見逃せない佳曲)⑪珍奇男

アップテンポの曲が続いた。現在なら盛り上がること必至のセトリで、拍手も1年前のそれより多い。だがこの頃のエレカシのライブはこれまでの「座って観る」形に囚われて、観客は椅子に縛り付けられたように立つ者は皆無だった。

MC「きょうは煙を出しまして(スモーク演出)、前々回から新しい趣向のようです」
⑫日曜日(調子はどうだ)⑬デーデ

MC「長寿になっちゃったりして、百歳ぐらいまで生きちゃって、それでいいかね。我慢しないとね。病気になったら病読に行ったりするんでしょうね、俺たちも」

⑭お前の夢を見た(ふられた男)⑮遁世⑯道⑰奴隷天国

アンコールはなし。ライブを盛り上げようとする姿勢は見られたが、この後も長らく鳴かず飛ばずが続いた。