何度も車にひかれた場合、誰が罪に問われるのか

ただでさえ解剖に労力がかかるひき逃げ事件ですが、最も大変なのは被害者が複数台の車に時間差でひかれてしまったケースです。

たとえば、深夜にAさんという人物が道路で車にひかれたとします。Aさんは道路に倒れ込み、ひいた車はそのまま逃げてしまいました。

その後、なにも知らない2台目、3台目の車がさらに時間差で、すでに路上に倒れているAさんをひいてしまい、翌朝には傷だらけの死体として発見されることになった……。

写真はイメージです
写真はイメージです

この場合、罪に問われるのは1台目のドライバーだけでしょうか?それとも2台目、3台目のドライバーにも責任はあると思いますか?

このような事件の場合、重要なポイントは「いつまでAさんが生きていたか」です。

1台目の車にひかれて即死していたのであれば、2台目の車はAさんの死体をひいたことになります。法律では死体を車でひいてしまっても、罪には問われません。

では、1台目にひかれたあともAさんは生きていて、2台目の車にひかれたことが原因で亡くなったのであれば? その場合は2台目のドライバーも罪に問われてしまいます。複数台にひかれた被害者の解剖では、外傷部分の出血量からそのあたりを正しく見極めなければなりません。

1台目の車にひかれた時点で心臓が破裂するなどして停止したのであれば、その後2台目、3台目にひかれたとしても、傷口から出血は起きません。心臓のポンプ機能が停止すると、全身に血液が送り出されなくなるからです。この理屈は、元栓が閉められた水道の蛇口を開けても水が出ないのと同じです。

一方で、1台目にひかれたあと全身にまだ血が流れている状態で2台目にひかれた場合は出血が確認できます。これは「まだ生きている証拠」で、法医学的にこれを生活反応と呼びます。