繰り返し叱るよりも効果的な方法
やみくもに叱ってしまい、相手にただの「嫌な記憶」として処理されるというのは避けたいですが、叱る際にこちらの言いたいことをしっかり伝えるにはどのようにすればいいのでしょうか。
その際に、叱る側はちょっと頭をひねらないといけません。
ありがちなのは、言いたいことだけ言って「あとは自分で考えてね」と放置すること。それでは嫌な記憶が刻まれるだけ。その部下は職場に来ることすら嫌になってしまうかもしれません。これが叱ることによる副作用です。
副作用を最低限に抑えながら叱る目的を達成するには、「修正してほしい行動」と、「どういう行動をしてほしいか」という代替行動をセットにして伝えること。脳で説明すると、「扁桃体で止めた後に、線条体のやる気行動のネットワークへとつなげる」ということです。
扁桃体から、線条体のやる気ネットワークにつなげるには、「褒め」と同様、具体的な行動内容を伝えましょう。
ただし、上司が頭ごなしに自分の考える解決策を指示してしまうのはNG。互いの言い分をすりあわせて、現実的な落としどころを見つけるという「ネゴシエーション」が不可欠です。実はネゴシエーションは面倒だしお互いに心理的負担もあるので避けられがちです。「一発怒ってこの問題は終了」にしたいのが本音です。しかし、「じゃあ、次はどうするか」まで両者で決められると、結果は大きく変わります。
では、互いの言い分をすりあわせ、現実的な落としどころを見つけるときにはどんなことに注意すればいいのでしょうか。
たとえば、部下一人ひとりの個人差を見ることも大事です。新しもの好き、刺激が好き、という、「新奇探索性が高いタイプ」の部下なら小さなネタでもいいから新しさのある課題を与えて、スケジュールも短めにしてさっさと仕上げさせる。
未知のことに対して不安を抱きやすい「損害回避性が高いタイプ」の部下なら、最初の段取りは手伝って、そのあと本人が始めやすくするなどを手助けするといいでしょう。こうして相手の〝快〞を刺激します。
いずれにしても最後に「あなたのこういう行動については、いつもすごく助かっているよ」と「褒め」で締めくくることも大切です。
叱られた部下がまた次の課題にチャレンジする…つまり、あえて怖い現場に行くことを促すには、繰り返し叱るよりも、「あそこに行ったらいいことがあるよ」と思い出させること、つまり、褒める=喜びを想起させる回数を増やすことのほうがずっと効果的なのです。
サバンナに生きる動物であれば、怖いライオンがいる場は避けて違うエサ場を探しに行けばいいのですが、職場となると「二度と行かない」わけにもいきません。柔軟に組織を移っていけるよう「雇用の流動性」を高めるべき、と議論がされていますが、本質的に雇用関係がある限り、人間関係の摩擦からは逃れられません。
そういうときにも、脳の仕組みとして理解しておくと、怒りや恐怖、傷つきから少し離れた「メタ」な視点で状況を眺められるのではないでしょうか。
文/篠原菊紀













