叱られた体験は、鮮明な記憶として残りやすい
飛び出しそうな子どもに向かって叫ぶのは緊急事態の行動で、相手の扁桃体が活性化すれば動作は瞬時に止められるので、「飛び出す行動」を止めるには非常に効率的なやり方なのです。そもそもそんなシーンで褒めてもしょうがない。「褒め」テクのように、「一歩踏み出す前に道路が安全かどうかを考えられたあなたは偉いね」なんて悠長に言っても危険は回避できません。
日常生活の中で、親が子を叱ったり、上司が部下を叱ったりする際も、基本的に同様の仕組みが働いているわけです。しかし、安易に「叱る」を繰り返すと、知らない間に相手を傷つけてしまうことがあります。
これが〝叱ることの副作用〞です。そこにおいても、知っておきたい脳の仕組みがあります。
扁桃体は、快・不快、恐怖や不安などの感情をつかさどります。楽しい体験や嫌な体験をしたとき、その体験は周囲の環境と強く結びついて記憶されます。同じ状況に再度遭遇したときに、これから起こる結果を予測し、対応するためです。
知っておきたいのは、叱られて「怖い」と感じた体験は、いつまでも鮮明な記憶として残りやすいこと。その記憶の残りやすさは、褒められるような楽しい記憶の3倍強く刻まれやすいと推測されます。なぜなら、うれしいことよりも恐怖の記憶のほうが優先度が高いから。次に同じような危険に遭遇したときに、回避できるようにしておこうという本能が働くからです。扁桃体から海馬に記憶が送り込まれ、その記憶は強く刻まれます。
動物がエサを探しに行って、おいしいエサ(報酬)にありついたとき、「次にまたあそこに行ってみよう」という意欲が高まり、「線条体」が発火します。しかし、あるときその場所に行く途中でライオンに襲われたら?これが「叱られて扁桃体が活性化した」状態です。一度襲われたが、命からがらすみかに帰ってきた。報酬につられてまたノコノコと同じ場所に行かないために、襲われた恐怖記憶のほうを強く刻む仕組みが脳にはあります。怖い記憶をすぐに忘れる個体は残念ながらすぐに命を失ったでしょう。
叱られる記憶は、褒められる記憶よりも残りやすい。こちらは軽く叱っただけのつもりでも相手には強い印象として受け止められてしまうのは、生き物の仕組みなのです。確かに、叱られた側は「あのとき、こう言われた」という台詞を鮮明に覚えているけれど、叱った本人はすっかり忘れている、ということがよくあります。













