ちゃんと味出してんのよ

大久保 伊賀くんの青春時代、1980年代とか90年代の新宿だったら、音楽でも洋服でもだいたい何でもあったでしょ。俺はド田舎の、さらにもっと遠くにある北海道のド田舎の出身だから、ずっと「ここには何もないから、どこかに探しにいかなきゃ」って感覚だった。それで高校を卒業して、東京に来たの。伊賀くんはさ、生まれ育った新宿に対して「ここには何もない」なんて感じたことあるのかな。

「昔の原宿は、今の雰囲気とはまったく違ってたよ」(大久保さん)
「昔の原宿は、今の雰囲気とはまったく違ってたよ」(大久保さん)

伊賀 「何もない」というよりは「何でもある」のが、自分にとっての壁だったかもしれません。地元は、西新宿のほうだったので。

大久保 ああ、新宿の中でもとりわけコクのある場所だ。

伊賀 顔見知りにはホームレスの人もいれば、ヤクザの息子もいるし、リアルに金子正次の『竜二』(川島透監督)の世界でした。何でもあるからこそ、逆に「自分にフィットするものを選んでいかなきゃならない」っていう気分だったのかも。

「本と音楽、そしてプロレスの青春でした」(伊賀さん)
「本と音楽、そしてプロレスの青春でした」(伊賀さん)

大久保 怖い先輩とかに揉まれる感じか。

伊賀 レコード屋巡りなんかは、そうですね。先輩にいろいろ教えてもらって。

大久保 前から顔見知りだけど、そんなにきっちり話したことはなかったよね。

伊賀 撮影現場では、何度もご一緒してるじゃないですか。大久保さんご自身はグッドバイブスなんですけど、こっちが勝手に緊張しちゃって、なかなか話しかけられなくて。

大久保 俺はさ、相当前から注目してたんだよ。

(大久保さんが雑誌の切り抜きを見せる)

伊賀 うわっ! 

大久保 これ、覚えてる? 馬場(圭介)とか、伊賀くんの師匠の熊谷(隆志)さんとか、11人のスタイリストがユニクロとコラボしてTシャツをデザインした企画。

雑誌の特集で撮影された「ユニクロ×スタイリスト」の企画
雑誌の特集で撮影された「ユニクロ×スタイリスト」の企画
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伊賀 そりゃ、もう。23、24歳ぐらいのときですよ。

大久保 (編集者に)見てよ。伊賀くんひとりだけ、ただ着てんじゃないの。Tシャツの裾を切ってさ、ちゃんと味出してんのよ。

伊賀 若気の至りです……これは恥ずかしい……(笑)。