メジャー組と国内組の対応に明暗

近藤健介は打席に入る前に屈伸を取り入れるなど、多くのルーティンが有名な選手だ。それが、一部を削ることによって「結果が出なかったのではないか?」と囁かれている。

前回のWBCは2番バッターとして打率3割4分6厘、出塁率5割。ハイパフォーマンスで日本の世界一を支え、24年にはパ・リーグの首位打者にも輝いた球界屈指のヒットメーカーは、今大会では1次ラウンド第2戦の韓国戦でピッチクロック違反を犯すなど、波に乗れなかったひとりだ。

第4戦のチェコ戦から指定席だったスタメンを外れ、13打数ノーヒットで大会を終えた。それでも松田は、近藤のパフォーマンスについてこのように評価している。

「全体的にダメなボールばかりを振っていたわけではないんですよ。仕留めに行くボール自体はよかったんですけど、いい打球でも野手の正面を突いてしまう不運があったとか、結果としてヒットが出なかっただけで」

WBCでの実績がある近藤だからこそ「ノーヒット」というインパクトが先行しがちだが、松田は全体像を冷静に見ている。

「多少なりともペースを乱されたのは近藤選手だけじゃないんでね。前回出場した選手では牧(秀悟)選手もそうだったし、NPBの選手は全体的にピッチクロックに少し苦労したんじゃないかなって結果になりましたよね」

吉田正尚や大谷翔平、鈴木誠也と、すでにピッチクロックが導入されているメジャーリーグで結果を残すバッターは、全員が打率3割以上をマークした。

村上宗隆と岡本和真も今シーズンから海を渡ったとはいえ、まだ新ルールでの実戦経験は少なく、ともに2割台前半と打率は低調だった。スタメンだった選手で3割以上を記録したNPBの選手は、5割の源田壮亮だけだった。

大会後、松田はコーチとしてピッチクロックとパフォーマンスの因果関係を検証した。宮崎合宿でダルビッシュが懸念していた「焦り」。それが現実に起こってしまった。相手ピッチャーは極端に焦らすような間合いを図らなかったとはいえ、やはり不慣れな「時間との戦い」は思いのほかバッターの精神的負担となっていたのではないか――。

そのような結論を見出した松田が、バッター心理を投影させながら解説する。

「日本での試合で打席内の時間を測ったら、ひとりあたり20秒から25秒くらいのインターバルがあるんです。選手の時の僕もそうでしたけど、バッターはその間に前のボールの対応を振り返りながら、次の配球を読んだり、タイミングを変えたり、いろんなパターンを考えるものなんです。

それが『8秒までに構える』っていう、WBCのルールのなかでは満足にできなかったと思います。いつもより10秒くらい削られるんで、体感として打席内で準備できる時間はかなり短かったはずなんです。

しかも、国際大会は初めて対戦するピッチャーばっかりなんで、いくら事前に映像とかを見て対策していると言ってもね、実際の打席で考える時間がないと余計にきつい。だから、いつもならできる駆け引きができずに、来た球に対して純粋に反応するしかなかった、みたいな。

今回は追い込まれたら簡単に三振してしまうケースが多かったんですけど、原因はそこにあるんじゃないかと思います」