空転しだした議論

「フェアプレイは選手だけじゃないんですよ。我々はあの旗を見ながら試合に臨んでいるんです。だから間違ったことであれば、改めるべきだと思います」

青木は折れない。

「我々の判断、少なくとも今回の事例に関する判断は妥当だと思います」

ドクター側からたまらず声が出た。

「我々の判断と先生の判断が違ったら、今後この(連絡協議会)会議は成り立ちません。こういう事例が繰り返し起こることは……」

青木「要するに我々はあまりにもこれはおかしいだろうという医学的な判断で判断を下したんです」

仁賀「WADAの条文に従わなきゃだめですよ。現場のドクターに委ねるべきと書いてあるんです」

青木「第三者の我々の判断も加わりますよということも」

仁賀「それは条文のどこにも入ってないですよ」

青木「それは適切な機関からもらえばいいんですよね」

青木は非を認めず、またも同じところで議論は空転しだした。見かねるように田嶋幸三が割って入った。

田嶋「僕は医者でも弁護士でもなくて、(JFA)専務理事としてまた選手・コーチの経験者として、この問題に関わらせていただきました。また文科省、FIFA、JADA等の窓口として関わらせていただきました」

田嶋はまずその報告をさせてほしいと切り出した。

「JADAがどう考えているか問い合わせたが、加盟していないこと、途中から関わることに対して適切ではないということで我々としての見解は出せないというふうに言われました」

これは寛田たちが公式文書をJADAから受け取る前のやりとりであったが、JFAとしてもJADAの判断を仰ごうとしていたことは自浄作用として評価できよう。また換言すればJFAもJADAの権威を十二分に認めていた証左である。

チームドクターたちが取ったJADAからの回答の重みをJFAも理解しているということである。田嶋は続ける。

「その後、WADAからFIFAに問い合わせがありました。それを受けて我々はすべての書類を英語に訳し、FIFAへ提出し、同じものを文科省にも提出しました。その上で口答でしか返事は来ませんでしたが、FIFA・WADAとも、本件に関してはCASには申し立てをしない。次回からは(試合数ではなく)期間で罰してくれという見解が来た。これについての見解はいろいろ見方があると思うので、事実だけを申し上げます」