理念が切り開いた常識外れの店舗展開
創業当時、「吉野家」のような牛丼店はカウンターのみの店が一般的だった。これは牛丼がファストフードであり、いわゆるガテン系の男性労働者が素早く食べて立ち去ることを想定したものだからだ。しかし、「すき家」はいち早くテーブル席を設け、ファミリー層へとターゲットを広げていった。
テーブル席は店にとって回転率が落ち、オペレーションも煩雑になるため、できれば設置はしたくはないものだ。効率や合理性だけを考えれば、この意思決定は決して行なわない。しかし、飢餓と貧困をなくすという理念に照らせばファミリー層の取り込みは必要不可欠な要素である。テーブル席の導入は小川さんらしい意思決定だ。そしてそれが奏功することとなった。
「すき家」はファミリー層をターゲットに加えたことで、必然的にロードサイド型の店舗網を拡大することになった。後にコロナ禍による巣ごもり特需で、強みを発揮する原動力となったものだ。
また、「すき家」は競合の牛丼チェーンに先駆けて「チーズ牛丼」をメニューに加えた。このような幅広い年齢層にフィットする商品を開発する姿勢は、やがてメニューをバリエーション豊かなものへと塗り替えていった。これがインフレ下の今、ファミリーレストランの価格高騰から零れ落ちた人々の受け皿となったのである。
「すき家」は全国で1969店舗(2025年3月末時点)、「吉野家」が1259店舗、「松屋」は牛丼店の他にとんかつ業態などすべてを含めて1342店舗だ。「すき家」が多くの人々に求められていることは、競合との店舗数の差が物語っている。













