「NISA貧乏」はもはや投資の問題ではない
ここに「NISA貧乏」という現象が重なる。生活費を削って投資に回す。しかし、その投資対象が下落し、さらに通貨の価値が下がれば、資産と購買力の双方が棄損する。これはもはや投資の問題ではない。生活そのものの問題である。
つまり今回も同じことが起きる可能性が高い。事態が落ち着けば市場は安心し、株価は戻る。しかし円安が維持されたままなら、その安心は単なる時間稼ぎに過ぎない。そして1年後、企業の収益圧迫、家計の疲弊、消費の鈍化という形で、その歪みは一気に表面化する。
ここで本来、日本が取り得るはずの選択肢として、「中堅国連合」という発想の重要性にも触れておくべきだろう。
米国か中国かという二項対立に呑み込まれずに、日本、インド、ASEAN、中東、欧州の一部といった中堅国同士が緩やかに連携し、バランスを取りながら関係を維持していく。このような多層的な外交こそが、本来の日本の強みであったはずだ。
風向きは、我々が思っている以上に変わり始めている
さらに注目すべきは、香港の存在である。中国は香港という接続点を維持することで、国際資本との関係を切らずに全体最適を保っている。完全に切り離すのではなく、あえて繋ぎ続ける。この設計思想は、対立と共存を同時に成立させる現実的なモデルでもある。
その横で、日本だけが関係を細らせていく。この非対称性は、単なる外交姿勢の違いではなく、戦略の有無そのものを映し出している。
そして問題は中国だけにとどまらない。対イランを含む中東政策においても、日本は従来持っていた独自の対話回路を自ら手放しつつある。資源の大半を海外に依存する国でありながら、米国に偏りすぎた姿勢を強め、バランスを失っている。この歪みは、やがてエネルギーという最も現実的な分野で跳ね返ってくる。
ここで初めて、皮肉な現実に触れておく必要がある。偏米的な政策を強める一方で、かつて改正を志向していた憲法第9条の存在によって、自衛隊の軍事的関与、すなわち軍艦の派遣を免れた可能性があるという点である。
結果として、日本はイランを直接的に敵に回すという最悪のシナリオを回避できたとも言える。この「制約」が「抑制」として機能したという事実は重い。風向きは、我々が思っている以上に変わり始めているのかもしれない。













