バフェットが株を売却したタイミング
市場はすでにその変化を映し始めている。2025年11月14日に掲載された記事で私は、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが株式を大きく売却し、現金比率を歴史的水準まで引き上げていることに触れた。
あの時点では、日本市場はむしろ高揚感に包まれていた。いわゆる高市トレードの文脈の中で、日経平均は5万円を超え、さらに上を目指すという楽観が広がっていた。
しかし、その裏側で、最も経験値の高い投資家がリスク資産から距離を取り始めていたという事実は、決して軽視できるものではなかったはずだ。
加えて、83歳のジム・ロジャーズは、ドナルド・トランプに対して、いつまでも80歳の大統領が続くわけではないと懐疑的な見方を明確にしている。そして同時に「通貨安の日本は没落する」とも言い切っている。
この言葉は過激に聞こえるかもしれないが、円安によって実質購買力が削られ続けている現実を踏まえれば、決して軽視できるものではない。
1年後に代償を支払う側に回るのか
結局のところ、中国発展フォーラムに日本の重鎮がいなかったという事実は、小さな出来事ではない。それは、日本がどの位置に立ち、どの方向に進もうとしているのかを映し出す象徴である。
市場も外交も、最後に効いてくるのはこうした「見えない温度差」である。そして、その温度差は、やがて価格となり、為替となり、生活となって跳ね返ってくる。
市場はいつも先に安心する。だが、現実は後から請求書を突きつけてくる。その請求書は、株価ではなく、通貨で支払わされる。そして通貨で支払うということは、我々の生活そのもので支払うということに他ならない。
構造上、市場は常に少数派が勝利する。誰もが「もう二度と円高にならない」と口を揃えた瞬間に、相場は裏側から回り始める。そいうものだ。
だからこそ今、安心している側にいるのか、それとも1年後に代償を支払う側に回るのか。その分岐は、すでに静かに始まっている。
文/木戸次郎 写真/shutterstock













