裁判費用などの総額は99万円

今年1月に入り、相手から示談の交渉を持ちかけられた。最初は『ゴッホピカチュウ』を本物だと主張していた出品者だが、なぜ急に示談を提示したのか。

「示談を持ちかけるということは相手も偽物と認めているという解釈もできますが、『偽物だとは認めないが、もう勘弁してくれ』という可能性もある。結局は『お金を払うから俺が罪を犯したことは黙っていてくれ』という話だと思います。

示談が成立すれば犯罪にはならない(刑事事件になりにくい)との考えでしょう。実際、刑事で罪に問えるか、警察が詐欺で動いてくれるかは私にも分からないところです」

相手の交渉を不審に思いながら、今年2月に入ってから示談を承諾。その理由についてこう明かす。

「私の動画の視聴者の中には、同じような被害に遭い、『騙し取られたお金を取り返したい』という声も多かったので、刑事罰にするよりも、民事で被害額を取り返す方法を示したかった。被害者が泣き寝入りすることのないように、その手順を残せればと思いました」

偽物だった『ゴッホピカチュウ』の代金、弁護士費用・鑑定料を含んだ裁判費用、示談金も合わせると、その総額は99万円に及んだ。

1枚のカードをきっかけに1年以上かかって裁判を続けてきた彼だが、ネットショップの危険性についてどのように思っているのか。

「フリマサイトで個人間の取引が加速するほど、意図的に情報を伏せて偽物を売りつけたり、『こちらは偽物だと気づかなかった。偽物だと知っていたという証明を出せるのか』と嘘をつく犯罪行為が増えています。

偽物を売る人は軽い気持ちでやっているかもしれないけれど、騙した相手が本気で怒ったらどうなるのか、裁判を通して分からせたかった。

フリマサイトを利用する人は、購入する前にまず『世の中には悪い人がいる』ということを念頭におくべきです。もし被害に遭ったら、裁判は分からないことも多いし怖いと思うけれど、私の発信を見て解決の手段を知ってほしいです」

株式会社ポケモンの公式サイトでは、ポケモンカードについて「転売等の営利を目的とした商品購入を固くお断りしております」との記載がある。

それでも、ポケモンカードの人気に乗じて、転売目的での購入、1枚100万円などの高額転売、そうした人気カードの偽物の販売、出品しているポケモンカードが手元にない「無在庫転売」などが横行しており、この一件は氷山の一角に過ぎない。 こうした実情を踏まえ、買う側の眼識を高める必要がありそうだ。

PROFILE カートンナイト。おもちゃ業界歴30年/YouTuber。トレーディングカード関連の動画をYouTubeに投稿。TCGを愛する人々に正確な情報を届けるため日々発信している。

取材・文/小島ゆう