日米の野球の違いを表すエピソード

日本に来る助っ人外国人選手を思い浮かべれば、理解しやすいと思います。助っ人の野手は総じてバッティングに優れ、守備の名手というタイプはあまり多くありません。メジャーでも考え方は同じで、選手に求められるのはまず打力であり、守備力や走力は二の次、三の次という位置づけになります。

かつてのオジー・スミスのような守備のスペシャリストがメジャーで減ってきている理由は、野球の戦術や評価基準の変化にあります。現代のメジャーでは攻撃力がより重視され、打球速度や飛距離、ホームラン数などの指標が高く評価されるようになりました。チーム全体の得点力向上が最優先事項となっているため、守備力が高くてもバッティングに期待できない選手は出場機会を得にくくなっているのです。

日米の野球の違いを表すエピソードを、ひとつご紹介しましょう。アメリカ人スカウトが日本の社会人野球を視察すると、その多くが「なぜこんなに足の速い選手ばかり揃っているんだ」と驚きます。社会人野球では「走攻守三拍子揃った選手」が好まれ、スタメン9人のうち5~6人が「盗塁可能」というチームも珍しくありません。

2025年9月に沖縄で開催されたU18の世界大会を見ても、日本の選手は他国と比べ、高い走力を持っていました。これは日本の高校野球に根づく「負けたら終わり」の野球観が影響していると私は考えています。

勝つためには、ひとつでも先の塁を狙い、機動力を用いたスモールベースボールで1点を取りにいく必要があります。その流れが社会人野球やプロ野球にも影響し、走攻守三拍子揃った選手や守備力、走力に秀でたユーティリティープレーヤーが重宝されるのだと思います。

しかし、アメリカで勝負するとなると、この日本的な野球観は通用しません。アメリカでも勝利は求められますが、その1点を「盗塁で取る」のか「ホームランで取る」のかという違いがあります。

アメリカは後者を選ぶ文化です。従って、守備より打力、とくに長打力が求められます。シングルヒットを積み重ねる巧打ではなく、スタンドまで運ぶ圧倒的な打力が必要になるのです。

メジャー挑戦の期待がかかる佐藤選手(写真/侍ジャパン公式Instagram)
メジャー挑戦の期待がかかる佐藤選手(写真/侍ジャパン公式Instagram)
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文/大屋博行

『メジャーで通用する選手の条件 スカウトは予言者であれ』(竹書房)
大屋博行
『メジャーで通用する選手の条件 スカウトは予言者であれ』(竹書房)
2026年2月20日
1,870円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4801948259

国際スカウト歴
日本人最長28年の眼力!

日本人が世界最高峰の舞台で
活躍するためには何が必要なのか?
現在過去にアメリカで結果を残している選手のほか、
日本で活躍中のプロ野球選手や高校球児たちの
具体的なポイントも示しながら、
メジャーを知り尽くした男が徹底解説!

著者は、以下のように述べています。

本書では、28年に及ぶ私のスカウト経験に基づいて、日米の野球文化や育成環境の違い、メジャーではどんなバッターやピッチャーが求められているのか、どんな選手が活躍できるのか等について、お話をしていきたいと思います。さらには過去から現在まで、「あの日本人選手はなぜメジャーで活躍できたのか?」という私見を、現役では大谷翔平選手やダルビッシュ有投手、今永昇太投手、菊池雄星投手、引退した選手では野茂英雄投手やイチロー選手、松井秀喜選手、松坂大輔投手などを例に挙げながら紐解いていきます。また、スカウトとしてピッチャーやバッターを見るポイントや、アメリカで伸びる選手と伸びない選手の違い、いまだから言えるメジャー移籍に関する裏話といった話題まで、長い経験から積み重ねた私なりの考えや分析を述べさせていただくつもりです――本文より

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