「増税して財政再建」は愚策中の愚策

アレシナ教授らは、1970年代後半以降の先進16カ国における数千もの財政措置を詳細に分析した。その結果、明らかになった事実は衝撃的である。

財政再建を行う際、「増税」を中心に行った場合と、「歳出削減」を中心に行った場合では、経済へのダメージに決定的な差が出るのだ。データによれば、増税による財政調整は、歳出削減によるものと比較して、GDP(国内総生産)成長率に対する阻害効果が数倍も大きい。

具体的には、増税は投資を冷え込ませ、消費を減退させるが、歳出削減はむしろ将来への安心感を生み出し、民間投資を刺激する「拡張的緊縮」をもたらす可能性があると指摘されている。

つまり、「増税して財政再建」というスローガンは、経済成長を自ら放棄する愚策中の愚策なのである。

はたして本当に減税できるのか
はたして本当に減税できるのか

増税を口にする前に、やるべきことは山ほどある。徹底した歳出削減だ。日本には、効果の疑わしい補助金や、硬直化した予算配分が山積している。そもそも、自民党議員たちは何のために年間3000万円もの歳費を受け取っているのか。

それは、国民に新たな負担を強いるための言い訳を考えるためではなく、自らの身を削り、既得権益に切り込んで無駄を排除するためではないのか。「増税」という安易な選択肢に逃げる議員には、高市首相は断固として「NO」を突きつけなければならない。

高市首相の周囲に群がる「積極財政」ブレーン

第二の敵は、無責任な「積極財政」ブレーンだ。

増税派と同様に、いや、ある意味でそれ以上に厄介なのが、高市首相の周囲に群がる「積極財政」を信奉するブレーンたちだ。彼らはこう囁く。

「自国通貨建ての国債なら、いくら発行してもデフォルト(債務不履行)はしない」「インフレにならない限り、財政出動は限界まで行うべきだ」と。

一見、国民にとって耳障りの良いこの主張は、アヘンのような甘い毒を含んでいる。国際通貨基金(IMF)が2024年4月に発表した『Fiscal Monitor(財政モニター)』は、この楽観論に冷や水を浴びせている。

報告書は、2024年が世界的な「大選挙イヤー」であったことに触れ、選挙目当ての放漫財政が繰り返されるリスクに警鐘を鳴らした。

IMFの分析によれば、選挙のある年は、ない年に比べて財政赤字がGDP比で平均0.3%悪化する「政治的予算サイクル」が確認されている。