「お金あるのに、なんで残業してるんだろ」

会社への恩義もあった。

「拾ってくれた会社だという思いもありましたし、迷惑はかけたくないという気持ちはありました。それが一つ。もう一つは、当時婚活をしていたんです。お金はあっても無職だと、社会的信用という点でどうしてもきついかなって。

“お仕事は何を?”と聞かれて“無職です。でも金はあります”って言っても、なかなか難しいと思ったんですよ。なんだかんだで、社会とはつながっていたかったんです」

さらに当時の転職事情も大きかった。

「今みたいに転職が普通の時代じゃなかったので、30を超えて40に近づくと、再就職はほぼ難しい。もしロトで当たったお金がなくなった時に再就職しようとしても、仕事はかなり限られるだろうなって。そういうことも考えましたね」

もちろん迷いがなかったわけではない。

「辞めたいと思ったことは何度もありますよ。仕事で失敗した時とか、上司に怒られた時とか。“何のために会社に行ってるんだろう”って。給料以上にお金はあるわけですから。残業していても“これだけしか残業代がもらえないのに、自分はなんで残業してるんだろう”ってむなしくなることもありました」

それでも会社員を続けられたのは、頭の切り替えだった。

「そこはもう、お金のことは別、って切り替えていました。今思えば、それで良かったなと本当に思います。辞めないで良かったかと聞かれたら、やっぱり良かったです。

会社って、単に生活費を稼ぐ場所じゃないんですよ。自分自身を現実に縛りつける場所というか、船の“錨”みたいなものだと思っていました。お金を持っていると、人って想像以上に浮ついてしまうんです。

私もかなり浮かれた人生を送ってきた時期がありました。でも必ず戻る場所があった。その戻る場所が会社だったんです。原点に復帰できる場所があるのは、すごく大きかったと思います」

昨年、定年退職し、最近、金髪にも挑戦した久慈さん
昨年、定年退職し、最近、金髪にも挑戦した久慈さん

もし当選後すぐ辞めていたらどうなっていたか。久慈さんは迷いなく言った。

「多分ですけど、お金はなくなって、再就職もできなかったでしょうね。学歴もないですから。タイあたりで沈没してるか、もしくはコンビニでバイトでもしてるか。そんな感じじゃないかなと思います。だから、会社に在籍していたのは、自分にとって正解だったと思います」

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取材/集英社オンライン編集部