「2000万円だけ口座から下ろして部屋に敷き詰めた」

2005年1月13日、平凡なサラリーマンだった久慈六郎さんは、ロト6で1等・3億2038万円の高額当選を果たした。当時38歳、給料は月27万円、楽しみといえば月に1度のキャバクラ通い程度の暮らしだったという。

当選した当時の久慈さん
当選した当時の久慈さん
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だが、突然の大金は暮らしを一変させた。

「最初は全額口座から下ろして、部屋に敷き詰めてみようかと思ったんですけど、それはやめて2千万円だけ下ろして敷き詰めました」

根が貧乏性で、突然、手にしたあぶく銭の使い方が思いつかず、「最初はとりあえず札束を眺めてた」という久慈さんだったが、そのうち歓楽街で“夜のパトロール”するようになり、外国人パブや高級クラブで散財。

「月に1回のキャバクラ通いが楽しみ」だった男が、気づけばシャンパンタワーに興じていた。(当時の詳細は#1#2を参照)

さらに日常生活の変化を綴った匿名ブログが人気を呼び、2006年に書籍化。反町隆史主演でテレビドラマ化されるなど、一躍脚光を浴びた。

当選金が振り込まれた通帳
当選金が振り込まれた通帳

だが、繁華街や夜の街での浪費、株やFXへの投資、さらにはオネーチャンにも何度も騙されて資金がみるみる減少。気づけば、当選金はスッカラカンに…。

そんな久慈さんだが、当選後もやめなかったことがある。それは会社だ。ともすれば大金を手にした瞬間、多くの人が思い描くのは、「即座に会社を辞め、悠々自適の生活へ」という王道のシナリオだろう。

だが久慈さんは、当選後も約20年間会社員として働き続け、昨年、定年退職を迎えた。

定年後の生活について尋ねると、久慈さんはあっさりと言う。

「もう管理される人もいませんし、起きる時間も寝る時間も何時でもいいんです。会社員時代は、時間に縛られているつもりはなくても、やっぱり縛られていたんだなと思いますね。今はその縛りがないだけで、気持ちがずいぶん軽くなりました」

ブログを読むと、その生活は実に整っている。規則正しく、健康的で、無駄がない。ミニマリスト的な印象すら受ける。そう伝えると、久慈さんは少し考えるように続けた。

「たしかに昔より欲が減ってきたと思います。お金がいっぱい欲しいとか、あれが欲しいこれが欲しいっていうのが、だんだん薄れてきた感じですね。若い頃は欲があるのが普通だと思うんですけど、今は“これがなくても平気だな”と思うことが増えました」

それは、一度大金を手にした経験と無関係ではないという。

「お金を手に入れた年齢やタイミングって、すごく大きいと思うんです。今の60歳で同じだけのお金があったとしても、昔みたいに豪遊したり、豪華な旅行に行ったりということには、たぶん使わないでしょうね。若い時は勢いもありますし、周りも見えなくなりますから」