物語は説明文よりも「実感」できる
なぜ教訓をそのまま言わずにイソップ童話にするのか。その理由のひとつは「わかりやすく、子どもにも伝えることができるから」です。
京都大学の柳瀬陽介さんは、「物語様式の思考」と「科学規範様式の思考」を対比させて、それぞれの特徴を分析しています*2。
「科学規範様式の思考」というとかなり難しく聞こえますが、要するに学術論文のような「お堅い説明文」だと考えてください。ダラダラと物語調にするのではなく、ビシッと用語を定義して、客観的かつ論理的に説明し、「結論は〇〇です!」とまとめたものです。
寓話などにはせず、十分なエビデンス(科学的証拠)によって武装した上で、「なぜ教訓の内容が妥当なのか」をズバッと言います。
確かに説得力があります。
一方で、「物語様式の思考」は、ゆったりとストーリーを語ります。使う言葉も定義がはっきりしないあいまいなものが多いです。登場人物が複数人いて、それぞれがそれぞれの気持ちで行動します。
その物語の結論さえ、複数の解釈がありえるものが多く、どういった解釈を取るかで読んだ人の意見が分かれることもしばしばです。
しかしその分、物語の読み手は、それぞれ自分に引き付けて読みます。
説明文は「事実」を説明するものですが、物語は「その読み手にとっての『意味』を見いだす」ものなのです。
物語の世界に没入し、登場人物に共感し、登場人物の置かれた苦境に自分も苦しみます。ハッピーエンドを迎えれば、自分が救われたような気持ちがします。
同じ教訓を語る場合でも、「物語のほうが教訓を『実感』できる」わけです。これが教訓をそのまま言わずにイソップ童話にする理由の2つ目になります。













