「男性も性暴力被害によって深刻な影響を受けるということを理解することが大切です」

では、男性が被害を訴えやすくなるために、社会には何が求められるのだろうか。

「性暴力被害は、一生にわたって心身にさまざまな影響を及ぼします。例えば、小学校の頃に学校で被害に遭ったような場合に、学校のトイレ行けなくなり、それが高校までずっと続いたり、時には命に関わるケースもあります。男性も性暴力被害によって深刻な影響を受けるということを社会が否定せずに受け止めて、理解することがまず大切です。

加えて、被害を打ち明けたら否定せずにしっかり耳を傾けることも大事です。それは学校や病院、警察などで被害者が相談したときにも言えることです」

写真はイメージです(PhotoAC)
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さらに、啓発のあり方にも課題があると指摘する。

「性暴力をなくすための啓発ポスターなどを見ると、今でも『痴漢の被害者=女性』と印象づけるものが多いと感じます。あらゆる性別の人が被害に遭う可能性があるということを意識していただくことも必要ではないでしょうか。

また、『痴漢に注意』といったキャッチコピーのように、『被害者の側が自分を守れなかったのが悪い』というニュアンスではなくて、『加害者が悪い』という考え方を徹底することも必要です」

また、相談窓口の場で男女差は根強いという。西岡氏は自身の体験を次のように話した。

「『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター』という相談窓口が全都道府県に設けられており、それとは別に行政が『女性相談』という窓口も設けています。そこでは性暴力には限らず、パートナーからのDVの被害や離婚相談など、さまざまな相談があるのですが、『男性相談』という枠ってあまりないんです。

一部で設けられているところもありますが、あったとしても女性よりも開設日が少なかったり、時間が短かったりして、そうした面でも大きな男女格差があります。

私自身も関西の一都市で女性相談の業務を行なっていましたが、男性からの相談も一定程度のニーズがありました。でもニーズに対して受け皿が追いついていないといった状況があります。そういう男性の困りごとにも社会が対応していけるようになることが望まれていると思います」

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一向に収束する気配のない痴漢被害。しかし調査では、防犯アプリを通じて周囲に助けを求められたり、実際に助けてくれたりしたというケースがあることも確認されており、西岡氏は「希望を感じた」と話す。

調査を通じて浮かび上がった痴漢被害の実態。性別にかかわらず、誰もが声をあげやすい社会を築くためには、まず事実を知ることが欠かせない。その先に、被害を見過ごさない社会への一歩があるのではないだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班