北朝鮮に残る“古い韓国”の風習

韓国と北朝鮮の文化の違いで驚くことといえばお酒の席でのマナー。韓国では目上の方とお酒の席で一緒になった場合、目上の方のほうを向いてはお酒を飲まずに、体を横に向け、左手で口元を隠して飲むというのがマナーです。

しかし、アンニさんとアンニさんのオモニは私よりも年上にもかかわらず、私が男というだけで「男性の前では横を向いて飲まなければならない」と言って、必ず横を向いて飲むのです。

「そんなふうに飲まなくても大丈夫ですよ」と言っても、「JUJUさんが大丈夫かどうかが問題なんじゃなくて、これまでずっとそうして生きてきたから、男性の前ではそうやって飲むんです」と言っていました。

韓国でも昔はそのような風習があったかもしれませんが、今は韓国では男女が平等になってきていて、お酒の席はとくにそのような気がしていたので、北朝鮮はまだ男性を立てる風習が残っているのだと驚きました。

韓国のお酒の席では男女平等が進んでいるという
韓国のお酒の席では男女平等が進んでいるという
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ほかにも、韓国では昔のこととなった古い風習が、北朝鮮では今でも残っているものがあります。例えば、これは韓国でも家庭によってはまだ残っている風習ですが、食事の席では、年長者が食べものを口にするまでは、年下の人たちはお箸も触ってはいけないということ。韓国では、その習慣が根づいている人は今でもしっかり守って実践していますが、だんだんと薄れてきている風習の一つです。

しかし、北朝鮮では今でもその風習が根づいているそうで、家族においては父親の権力が絶対という感覚が残っているそうです。実際に、脱北者の方々に話を聞いてみると、「お父さんは恐い存在」と口々に言っていました。

韓国では、父親の立場はどんどん弱くなっているように感じます。とくに今の若い世代においては、父親は家族の中で絶対的な権力があるわけではなく、何か言おうものなら、すぐに奥さんに怒られてしまうというのが一般的。そのため、脱北者の方々の話を聞くと、私の親の世代の話を聞いているような感覚になります。

また、同じような言葉を話していても、北朝鮮の言葉は、言い方や口調の強さが韓国語とは異なるのも面白いです。日本の方からすると、韓国語も北朝鮮語も同じように怒っているような口調に聞こえるかもしれませんが、韓国人の私にしてみると、北朝鮮の言葉は韓国語よりも怒り口調に聞こえるのです。

興奮したときなどは、とくに「あれ? 怒っているのかな?」と思ってしまったほど。しかし、平壌の方の話し方は少し異なっていて、ほかの地域の出身の方よりも少し落ち着いている口調に聞こえます。

ただ、使う単語やイントネーションが、昔の韓国のニュース番組のキャスターのような言い方をするため、すごく堅苦しくも聞こえるのです。ニュース番組のキャスターの話し方といえば、韓国と北朝鮮とのそれを聴き比べると、口調の違いに気づくと思います。北朝鮮のキャスターのほうが、抑揚がかなり強いのです。

面白いことに、同じ北朝鮮の人たちでも、平壌出身者には地方出身の言葉が怒っているように聞こえるといいます。実際、平壌出身のソアさんは、地方出身の脱北者の方の話す言葉を「恐い」と言っていました。私にとっては、どちらも怒っているように聞こえるのですが、それは日本の方が、韓国語も北朝鮮の言葉もどっちも怒っているようだと思うのと同じですね。

#3に続く

文/ジュジュワールド 写真/Shutterstock

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ジュジュワールド
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