3つのテンプレ回答を使いまわす斎藤知事

そして実は「個人的な見解として承る」という言葉は今回だけでなく斎藤知事が今年多用するようになった“テンプレート回答”の1つだという。

「ほかに『真摯に受け止めます』とか『県の対応は適切、適法です』というテンプレがあります。厳しい質問にはこの3つくらいのフレーズを使い回してまともに答えない頻度が増えました」と県議会関係者は話す。どうしてこうなったのか。

斎藤県政の混乱が表面化したのは昨年3月のこと、当時の西播磨県民局長Aさんが知事のパワハラなどを告発する文書を県議やメディアに送ったことが始まりだった。

告発を察知した斎藤知事は「4人組」と言われた側近を集め発信者探しを指示。メール解析などで告発者をAさんと特定し懲戒処分にかけている。

24年9月6日、兵庫県議会百条委員会で証人尋問を受ける斎藤元彦知事 撮影/集英社オンライン
24年9月6日、兵庫県議会百条委員会で証人尋問を受ける斎藤元彦知事 撮影/集英社オンライン

さらに4人組の一人、井ノ本知明元総務部長は調査過程で入手したAさんのプライベートな文書を複数の県議に見せて回っていたことが発覚。

「Aさんの人格をおとしめ告発には信ぴょう性がないと印象操作するためだろう」と捜査関係者の指摘するこの漏えいがあった後の昨年7月、Aさんは「一死をもって抗議する」との言葉を残し自死している。

そして今年3月、弁護士らによる県の第三者委員会は、Aさんが指摘した斎藤知事のパワハラを事実と認めた上、告発者探しを行なってAさんと特定し、処分したことは公益通報者保護法違反だと断定する結果を発表した。

「5月にはさらに大きな激震が走りました。井ノ本元部長が情報漏えいは『斎藤知事らの指示でやった』と供述したと別の第三者委が公表し、同委は漏えいが『斎藤知事と片山安孝副知事(当時)の指示を受けて行なわれた可能性が高い』と結論付けたのです。
この2つの“クロ認定”を斎藤知事は否認していますが、根拠を示せず会見や議会で追及を受ける中でテンプレ回答を連発するようになったのです」(県議会関係者)

情報漏えいでは斎藤知事は井ノ本元部長らとともに地方公務員法違反罪で告発を受けており、「関係者の事情聴取はほぼ終わり、捜査は終盤です」と県警関係者は話す。

兵庫県警(撮影/集英社オンライン)
兵庫県警(撮影/集英社オンライン)