ガラガラの店内で相席を希望してきた女子学生

その後、店舗では防犯カメラの映像を確認し、男性の映像のスクリーンショットは各テナントに共有された。

一連の出来事のなかで、のしいかさんの印象に特に強く残っているのが、女性が助けを求める際に口にしていた言葉だという。

「『自意識過剰だと思われたらどうしよう』と、すごく気にしていました」

危険そのものよりも、「勘違いだと思われること」。それが、彼女にとって大きな不安だったのだ。

のしいかさんの投稿をきっかけに、SNS上では「自分も似たような経験がある」といった体験談が次々と寄せられている。

たとえば、美術館で不審な行動をする人物がいた際、スタッフ間でリアルタイムに情報共有して対応していたという声。あるいは、家電量販店で買い物をしながらレジの店員に小声で「後ろの男性に付きまとわれている」と伝え、助けを求めたという声もあった。

さらに、秋葉原のパン屋でコーヒーを飲んでいた男性のもとに、空席が多いにもかかわらず、中学生くらいの女の子が「相席いいですか」と声をかけてきた、という体験談もある。女の子は何も注文せず、コートも脱がないまま、スマートフォンを操作し続けていた。男性は違和感を覚えつつも、その場では深く考えなかったという。

しかし後になって、別の投稿などを目にして、「あれはSOSだったのではないか」と思い当たった。

女子学生が話しかけてきた真意とは…
女子学生が話しかけてきた真意とは…

不審者に付きまとわれている人は、相手を刺激しないように、また、こちらが察知したことを悟られて行動をエスカレートさせないように、極めて慎重に動く。だからこそ、「助けて」と声を張り上げるのではなく、買い物のフリをしたり、相席を選んだり、そっと周囲に声をかける――そんな形で支援を求めるケースが少なくない。