外資が逃げた先は「東京市場」だった
では、外資はどこへ逃げたのか。実はその流れが東京市場を押し上げている。ただし、誤解してはならない。外資は日本を愛しているわけでも、日本企業を本気で評価しているわけでもない。
ただ単に、中国が怖すぎて“消去法で最も安全そうに見えた日本”へ資金を避難させたにすぎず、世界のマクロファンドが口を揃えて言う 「We don’t love Japan. We just hate China more」(日本を愛しているわけではない。中国が憎いだけだ) という言葉が、その本音を最もよく説明している。
インドはすでに高値圏で深追いできず、ASEANは市場が小さく、中東は国家ファンド主導で短期マネーが定着しづらく、米国は金利負担が重い。
結果として、円安が進み、相対的に割安に見えた日本だけが仮住まいに選ばれただけで、この上昇は企業実力ではなく、外資指数買いと円安錯覚が作り出した“二重の幻影”に過ぎない。
そして、この構造が崩れる瞬間こそが“逆回転”の始まりであり、角度をつけて上がってきた相場ほど、反転するときの落差は深く、急で、容赦がない。
実は逆回転は中国からではなく米国から始まる可能性が高い。FRBが利下げに踏み切った瞬間、世界マネーは“母港”であるNASDAQへ帰還し、東京市場に滞留していた外資は滞在理由を失い、静かな足音で出口へ向かうはずだ。
中国需要の冷え込み、利上げできない日本の構造的弱点
売りが一斉に噴き出すわけではない。むしろ、逆回転の初期は“違和感のような静けさ”として現れるから厄介なのだ。
フローが止まり、出来高が減り、指数だけが惰性で押し上げられ、専門家は「まだ強い」と言い続ける。だが、その段階こそが市場の酸素が断たれた最初の瞬間であり、誰もが気づかないうちに、土台は静かに、しかし確実に軋み始めている。
東京市場はいま、ちょうどその境界に立っているように見える。円安が追い風に見え、企業業績がかさ上げされ、外国人買いが指数を持ち上げ、日本市場は強いと錯覚させる。
しかしその内側では、中国需要の冷え込み、世界製造業サイクルの停滞、輸出統計の鈍化、家計負担の増大、利上げできない日本の構造的弱点が、ゆっくりと、しかし確実に積み重なり、外資が退く準備を着々と整えている。
驚くことに、逆回転は“終わり”ではない。むしろ、ここからが日本の資本市場の本当の始まりとなるはずだ。外資による指数買いという化粧が剥がれ落ちたとき、ようやく企業の素顔が露わになり、修羅場のマネーが長年見続けてきた“忘れられた価値”が表舞台に押し戻される。













