なぜ深大寺が自然界隈で人気なのか

いま若い世代の間で密かに広がっているのが、自然豊かな場所で心と体をリフレッシュし、その様子をSNSで共有して楽しむ――いわゆる“自然界隈”ムーブメントだ。

浅草や鎌倉といった観光地の混雑を避けつつ、遠すぎず、映えすぎず、それでいて“ちょうどいい非日常”が味わえる場所。そんな絶妙なバランスを求めるZ世代の感性に、深大寺は見事にハマったようだ。テレビやSNSで紹介されたことを契機に一気に火がつき、最近では“原宿化している”と表現されるほど若者が押し寄せているという。

写真はイメージです(PhotoAC)
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だが気になるのは、都内近郊には自然スポットが数多く存在するにもかかわらず、なぜ深大寺だけが突出したのかという点だ。この疑問をネイチャーガイド・橋谷晃氏にぶつけると、次のように分析してくれた。

「深大寺周辺を“自然界隈”としてみてみると、いくつかの特徴があります。

本格的な登山ウェアや装備は不要で、普段着のまま気軽に訪れられる。人の手が適度に入っているため安全性が保たれ、疲労感やリスクも少ない。そんな“自然っぽさ”が心地よいのだと思います。

もうひとつは、“癒しを目的とした自然”であること。アクティビティに挑戦したり、冒険的な行動を求めたりするのではなく、静けさや清々しさに包まれて心を整える――そうした体験を望むニーズがZ世代のあいだで高まっているのです」(以下、「」は橋谷氏のコメント)

深大寺山門(PhotoAC)
深大寺山門(PhotoAC)

さらに、深大寺の魅力は自然だけにとどまらない。

「歴史ある寺社のたたずまい、水辺の景観、参道のそば店やカフェ、絵付け体験など、多くの楽しみが一つのエリアに凝縮されています。自然を軸にしながら複数の目的を同時に満たせる場所になっている。テーマパークや複合施設に慣れた世代ほど、この“コンテンツの多さ”に惹かれる傾向があります。

都心から比較的近く、“思い立ったら行ける距離感”も満足度につながっています。最寄駅からバスに乗る必要はありますが、その程度であれば『ちょっとした旅感があってむしろ良い』と感じる人が多いようです」

深大寺(PhotoAC)
深大寺(PhotoAC)

そして、深大寺の人気を後押しする決定打が“穴場感”だ。

「大規模観光地のように“そろえられたアトラクションを楽しむ”のではなく、自分の足で歩き、“お気に入りを発見していく”プロセスそのものが楽しい。そうした“自主探索型”の体験が、Z世代に深大寺の魅力をより強く印象づけているのでしょう。

もともとこうした楽しみ方自体は昔からありましたが、“自然界隈”という呼び名でひとまとまりに認識され、一定の人数に広がったことで、一つのブームとして可視化されたのではないでしょうか」