政府に利用される反日感情

中国政府が反日感情を使って、国民の不満をガス抜きしているように見える点も見逃せない。 

2005年に中国各地で大規模な反日デモが起こった。これは当時の小泉純一郎首相の靖国神社参拝を背景にしたものだと言われている。しかし、当時の中国は経済大国に向けて急成長している途上にあり、デモが頻発した時期は若者の失業率が高まった背景もあった。

生活能力があるにもかかわらず、「自分が何をしたらいいのかわからない」「自分に何ができるのか不安だ」という悩みを抱え、成人しても年老いた親に経済的に依存するパラサイト族(啃老族・傍老族)が中国国内に溢れるようになっていた。

デモは若者の社会へのうっぷんを反日感情に吸収させる都合のいい存在だったはずだ。

2023年も中国の不動産不況の深刻度が増していたタイミングだ。中国の不動産開発大手、「恒大集団」は深刻な債務危機に苦しんでおり、地方財政における不動産関連の歳入が悪化。中国政府はこの年に過去最大の財政赤字を計上している。

現在も中国の景気は冴えない。2025年7-9月の実質GDPは+4.8%で、前年から伸びが縮小している。不動産業は4四半期ぶりにマイナスに転じた。若者の失業率の高さは深刻で、8月に16~24歳の失業率は18.9%となり、2023年12月以降で最も高い数字になった。

不買運動へと至る悪条件がそろってしまっているかのようだ。日中両国の国民ともに冷静でありたい。

取材・文/不破聡 写真/shutterstock