「処理水」を「汚染水」と呼んだ中国政府
いっぽう、ユニクロのファーストリテイリングは、中国事業の収益性を高めるための構造改革を進めている最中だった。
2025年8月期における中国大陸の売上収益は6502億円で、海外事業全体の3割以上を占めている。ただし、中国国内の景気低迷の影響を受けて減収減益だった。
そのため、利益率の改善を急ピッチで進めており、販管費率を改善。値引率も低下させるなど、その効果が出始めていた。2025年6-8月は11%もの増益になっている。
正にこれからというタイミングで、日中関係の緊張が高まったのだ。
日本製品の不買運動が懸念される中で、かつて中国の不買運動に苦しめられたのが「資生堂」だった。2023年に福島第一原発の処理水を海洋放出すると、中国のSNSで日本の化粧品の不買運動の呼びかけが活発化。結果的に資生堂は2023年12月期を2割の営業減益で着地している。期初におよそ2割の営業増益を予想していたにもかかわらずだ。
原子力に関する高い専門性を有する国際原子力機関(IAEA)が、福島原発の処理水は国際安全基準に合致しており、人体と環境への影響は無視できると報告書で結論づけていた。しかし、中国政府は処理水を「汚染水」と呼び、水産物の輸入を禁止した。中国国民の不安を煽るような言動を行なったのだ。
やがて中国国民の間で日本の化粧品には海水や海洋生物を使っているなどという、真偽不明のデマ情報が飛び交うようになり、冷静さを失った一部の人々が混乱に陥ったのだ。
中国はとにかくメンツを重んじる国だ。一度振り上げた拳はなかなか下ろせない。ただし、処理水に関しては韓国や台湾が中国になびかなかったこともあり、中国の反発はトーンダウンしていった。
しかし、今回の高市首相の発言は台湾に関するものであり、簡単に強硬な態度を崩すとは考えにくい。












