閉店理由を赤裸々に告白「売れないんだもん」
しかし時代は変わる。平成の初期を過ぎたあたりから徐々に売上は落ち始め、インターネットやECサイト、電子書籍の台頭も加わり、状況は厳しさを増した。
「売れた時は月500万以上だったけど、今? 恥ずかしくて言えないくらい。平成に入って2〜3年くらいからこうだな」
閉店の理由を尋ねると「人が来ないから」「売れないから」と即答する。「続けたかったですか?」と聞いてみると――
「続けたくないよ。売れないんだもん。店を開けてたって人が来ない。私も年取る、お客さんも年を取る。だから、だんだん疎遠になっていくしね」
潔いほど静かな決断だった。しかしいざ閉店がSNSで知られると、予想を超える反響が寄せられた。
「辞めるのは困るなっていう方もいた。私はスマホ持ってないけどね、私の知ってる人のところに、メールでずいぶんとメッセージが来てるらしいの。“ご苦労様”とか、“寂しい”とかね」
そんな中、先日店には、青森から20歳ほどの若者がひとり訪れたという。
「まだ若いからうちの常連とかでもないと思うけどね。お米を持ってきてくれたの。“閉店すると聞いたから”ってわざわざ青森から来たんだよ。世の中って面白いよね」
取材の最後に、店を続けてきてのやりがいを尋ねた。
「生活かかってるからね。いいの悪いのって言ってらんない。お金があったらやめちゃうわよ。そもそもだってあたし、90だからさ。かわいそうじゃない?(笑)」
そう言って笑う表情は、疲れ切ってもいなければ、感傷的でもなかった。ただ、日常の一コマとして世の中の流れを受け入れているようだった。
閉店を発表してから届くさまざまな声について、和子さんはこうつぶやいた。
「みなさんの役に立っていたのかな」
本が売れなくても、街が変わっても、74年ここで灯りを消さなかった。その事実だけで十分に価値がある。秋葉原の歴史の陰には、こんな店があったという記録を、いつまでも覚えていたい。
取材・文・撮影/ライター神山













