1900円のフリースが“かっこいい”一品になる
子どもが秋山のファンだという家では、秋山への応対は普通だった母親が木村を見るなり「いやー、ちょっと待って!」と逃げ出すのだった。やはりキムタクの「かっこいい」は、世間の大部分にとっては別格なのである。女性だけではなく男性もという点が、他の「かっこいい」男性芸能人との違いを際立たせる。
さらに、乗馬クラブを訪れた際、寒さを避けるため木村は壁に掛けてあったフリースを借りて羽織ったのだが、その姿を見て秋山は、「そこにあったフリース借りただけなのに、それ欲しくなっちゃうってどういうこと?」と驚いていた。18日の『伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評』(テレビ東京系)でも、秋山はこう語っている。
「たまたま壁にある乗馬のおじさんのフリースみたいなのがあったんですよ。(それを木村さんが)たまたま手に取って『これって借りちゃっていいっすか?』って言って、『どうぞどうぞ』って言って、それ着たらめちゃくちゃかっこいいんですよ。それが欲しい! 新作? 何そのフリース!」
実際、『秋山ロケの地図』放送後、このフリースは一部で話題になったという。あるネット記事によると、木村が着ていたのはワークマンの1900円のフリースで、販売サイトでは一時在庫切れにもなったという。かつて主演ドラマ『HERO』(フジテレビ系)で主人公のトレードマークだった定価15万4000円のダウンジャケットを流行らせた威光は、いまだ健在ということか。
なんと‼️
— ワークマンプラスさいたま丸ヶ崎店 (@workman_saitama) November 20, 2025
【ダイヤフリース裏アルミジャケット】
1900円税込
当店にて販売中です🙋♀️
残念ながら木村拓哉さんご着用のデザインは、昨年モデルのためご了承ください。#2025秋冬#ワークマン#さいたま市#さいたま丸ヶ崎 https://t.co/ayTzmiPE38
木村がたまたま手にとったフリースが、「かっこいい」ものになる。なるほど、逆なのだ。我々は木村拓哉に「かっこいい」の尺度を当てはめようとしていたが、そうではない。少なくともテレビのなかでは、木村こそが「かっこいい」の尺度なのである。
テレビにおける記号としての「キムタク」は、「トヨエツ」とか「ガッキー」とか「松潤」といった愛称の類ではなく、「メートル」とか「キログラム」とか「ドル」といった尺度のひとつなのだ。
それにしても、ずっと変わらずに盤石の「かっこいい」を維持し続けるのは並大抵のことではない。テレビと木村と視聴者のこの30年あまりの関係は、「かっこいい」の尺度の位置にキムタクがいることを確認しあい盤石にする歴史だったとも言える。
とはいえ、世代は変わっていくのも事実。今回番組に出てきた女子中学生は、木村への対応はあっさりしたものだった。高価なダウンジャケットから1900円のフリースへの変化。それはそのまま日本社会やテレビ業界の停滞と重なっているようにも見えるが、さて。
文/飲用てれび



















