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恋人を欲しいと思ったことはない

日本の有名私立大学で研究員をしている35歳のシンガポール人のシェリーさん(仮名)は、男性の経験がないということも、

「別に。しなくてもいい」

と、普通に答えている。多くの人と違うからと、無理しているとか、それを負い目に考えているとか、そういう印象はまったく感じられなかった。それが彼女の価値観のなかでは特別ではないことなのだろう。そう考えた時、これまでのインタビューを総合して、私はひとつのことを思いついた。

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シンガポール
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男性経験をするということは、体の構造上からも、どうしても女性が「受け身」の立場になる。そのことが受け入れられず、イヤだという理由のひとつになっているのではないだろうか。

「(受け身だから)イヤってことはありえますよね。たぶん……」

表情を変えずに、これまで通り私を見つめたまま言った。この答えはシェリーさんらしく、私には腑に落ちた気がした。

多くの女性が経験する男性経験や結婚。それをしないという選択をすれば、自分の産んだ子供に出逢うことがないという生き方になる。それをシェリーさんはどう思っているのだろうか。するとシェリーさんの顔が笑顔に変わった。

「子供はあまり好きじゃないです。うるさいし、研究できなくなるし……」

ちょうど私たちがいるホテルのラウンジで、小さな子供の高い声が上がった。その声は耳に痛いほどだったが、シェリーさんは顔を歪めはしなかった。子供が好きじゃないと言っても、恋愛や男性と同じように、「ないもの」としているだけで、毛嫌いしているわけではないと、私はシェリーさんの優しさを確認した。