なぜこの家に「おこめ」は通いはじめたのか…
「基本的に仲良しですが、お互いマイペースなのであまりじゃれ合ったりはしませんね。たまに一緒にくっついて寝ていると微笑ましいです」
「ときどき本気の喧嘩をするときは、たいていむぎのほうが最終的に矛を納めてあげているような感じがしますが、そもそも最初はむぎの方からおこめにちょっかいをかけているような気もします。好きな女の子にイジワルをしちゃう男子のような感じでしょうか(笑)」
“好きな女の子に意地悪しちゃう男子”。その比喩が妙にしっくりきて、2匹の距離の近さが自然に伝わる。
「おこめは相変わらずおしゃべりで、寡黙なむぎと対照的です。私達夫婦が寝る時間になって部屋の電気を消すと、二人で運動会(追いかけっこ)を始めますので騒がしいです」
おこめのお気に入りのポジションは腹よわボーイさんの妻の枕の上で、寝ている妻の頭の上にいることが多く、むぎは腹よわボーイさんの腕枕で寝ているそう。だが、たまに夜中に二匹のポジションが入れ替わっていることがあるのだとか。
もはや、“家族の風景”としか言いようがない。おこめは運命に導かれるように、腹よわボーイさんの家の子になったような気がしてしまう。
ではそもそもなぜおこめは、腹よわボーイさんの家に通うようになったのか。
「特に思い当たるところはありませんが、強いて言うなら、うちはお寺でして、春先の寒い時期にお堂の床下なんかが過ごしやすかったのかもしれません」
ただ、ネコは飼い主を選ぶともいう。もしかしたら2024年の秋から、おこめは静かにいろんな家を見て回っていたのかもしれない。
そのうえで、「ここなら」と思って、春から通い始めたのだとしたら――。偶然のようでいて、どこか意図的な。そんな小さな選択が重なって、今の暮らしにつながっているのかもしれない。2025年春に話題になったあの出来事は、あのときで完結したのではなく、今もずっと更新され続けている。
取材・文/集英社オンライン編集部













