毎日皆勤の常連客が40人以上も来店
この価格を支えるのは、夫婦2人だけの運営と家賃がかからない点が大きいという。
「2人でやってるからね。人を雇って家賃払ってたら、この値段じゃ絶対にできないよ」
さらに店は14時で閉店する。理由は“次の朝に備える”ためだ。開店前から並ぶお客さんのために、麺のストックを“翌朝に振る”という経営判断である。この店の朝の回転を支えているのが、常連たちの存在だ。
「(平日は)毎日来る人が30〜40人いるよ。飽きずに来てくれるんだから嬉しいよね」
常連の存在は店主にとって大きなモチベーションになっている。74歳で毎朝3時に起きて3時半には店に着き、仕込み作業を行なう。6時の開店前から並び始めるお客さんのため、店主はこの厳しいルーティンをいとわない。
「立ち食いそばの魅力って何ですか?」と聞くと、店主はこう答えた。
「大したもんじゃないよ。お客さんが来やすい。早く出してあげられる。それだけ。吉野家と同じ。“早く・うまく・安く”。それだと思うよ」
最後に、昨今の物価高騰がどれだけ負担になっているのかを聞いた。
「仕入れるたびに値段が上がってるよ。特に海のものは高いね。ゲソ天もね、800円くらいもらわないと合わない。でも800円じゃ食べないでしょ。だからやめたんだ」
大量仕入れで安く抑える方法もあるが、大きな冷凍庫は置けない。現実を直視したうえで、できる範囲の価格を守っている。
「体の続く限りやりたいよ。でも夫婦どっちか倒れたら終わりだよ。74歳で朝3時に起きて3時半に店来るって、しんどいよ、本当はね。1年前までは昼休みなしでずっとやってた。でも疲れちゃうからさ。ちょっとでも椅子に座る時間がないとだめだね」
物価が上がっても、設備が小さくても、できる範囲の工夫で“立ち食いそば”を守る。7年前に夫婦2人で始めた小さな店は、今や誰かの“一日のスタート”を支える場所となっている。
取材・文/ライター神山














