費用トラブルを回避する非常に単純な方法

多くの業者で葬儀前に総額の目安を言わないパターンのひとつは、冒頭のAさんが経験した「プラン」による営業だ。

「例えば、家族葬のプランを50万円から用意していますと広告していても、プランはあくまで基本料金で、オプションなしには葬儀自体ができないほど必要なものを欠いているケースが圧倒的に多いです。ホームページにはすごく小さい字で『別途料金がかかる場合があります』と書かれていたりします。

私が口あんぐりになったのはドライアイスも基本プランに含まないものです。ご遺体を冷蔵できる安置室があるならまだしも、普通はあり得ません。その業者は『使いたかったら(ドライアイスを)お売りします』と答えました」

写真はイメージです(PhotoAC)
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もうひとつ葬儀費用について忘れてはならないのは葬儀業者以外にも支払先があることだ。

「葬儀費用は葬儀業者だけでなく火葬場や食事を出す料理店さん、香典返し業者さんなどに別に支払うことがあります。その場合、葬儀業者は自分の売り上げにはならないため、別の支出があることを最初に言いません。

これは利用者の方も葬儀全体で何にお金がかかるのか分からず『とにかく葬儀屋さんに言えば全部そろうんでしょ』と思っている人が多いことも背景にあります。費用の全体の仕組みをちゃんと説明してくれる葬儀屋さんであればいいけど、それは1割くらいです」

写真はイメージです(PhotoAC)
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ただ、その1割に運よく当たらなくてもトラブルを回避する術はある。

「防ぐ方法は非常に単純で、葬儀業者から見積もりをもらったら『この他に支払うものはないですか?』と確認をとることです。

そして、この作業は絶対に誰かが亡くなる前にやった方がいい。葬儀の見積もり相談は普通2時間以上かかります。『これ以上払うものはありませんね』と念押しをする交渉を数社と行なって相見積もりを取るのは、亡くなった後では時間的に現実的ではありません。そして電話ではなく直接会った方がいいです」

他方、このように価格が前面に出るのは「量産型」の葬儀業者を選んだ場合で、これとは別に生前の本人や遺族の希望を式の内容に反映させる「提案型」の葬儀を行なう業者もあるという。

「故人の希望がちゃんと反映されたその人らしい葬儀で、故人と一緒に過ごせる時間を体感できたという遺族は、やってよかったという実感を持つので料金の高いか安いかでは判断しないですね」

写真はイメージです(PhotoAC)
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日本の死亡者数は昨年初めて年間160万人を超えた。多くの人が葬儀で見送られる日本では、葬儀トラブルは誰にとっても他人事ではない。自分や愛する人の別れの場をどうするか、事前に考えておくに越したことはなさそうだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班